人も地球も健康に Yakult

今後の経営展望について

~2009年3月期 第2四半期 決算説明会 11月14日 (抜粋)~

はじめに

今期は、2010年度以降の、大きな成長のために避けては通れない課題であります「国内事業の近代化推進」と、「インド、米国、中国の人口大国への進出」という計画を組んでいました。その計画は、着実に進んでおります。
しかし、この半年間に市場環境は、大きく変わってきました。そのため通期の損益予測を修正しなければなりません。
その理由は、第一に「原油高騰による原材料費や諸経費のアップ」。 第二に「中国のメラミン汚染問題等」。 そして三つ目が「金融危機による世界的経済不況」など、私どもの事業活動におきまして、何十年に一度あるかないかの大津波が、一度に襲ってきているからです。

修正理由

まず、「原材料費の現状と見通しについて」、ご説明します。
3年前から原油相場の高騰、海外諸国での牛乳消費の増加による需給の逼迫(ひっぱく)によって「脱脂粉乳」が上がり、また、「とうもろこし」のバイオエタノールへの転用増により異性化糖が急騰しました。海外では、原料の絶対量の確保を最優先に考え、価格高騰の最中でしたが、先ず2008年度分を確保し、価格が沈静化に向う中、2009年度分についても良質な原料の手当てを既に終えることができました。
一方、国内では、前年度と比較して原料コストが、約21億円増加するだろうとの予測で計画を組んでいましたが、さらに、約8億円の増加、すなわち、約29億円増に膨らむと見込んでいます。この結果、海外と国内を合わせると、今年度は、前年度と比較して約50億円の増加が予測されています。そして、日本では、2009年も引き続き原料コストはアップするのではないかと、危惧しています。

次に、「中国のメラミン汚染問題などの影響について」です。
中国では、今月に入り、ようやく中国の乳業メーカーがつくる、牛乳製品が店頭に復活していますが、乳製品に対する不信感は根強く、売れ行きも良くないようです。 日本国内も、その影響か乳製品の売上げは、芳しくありません。
この間、中国での「ヤクルト」は、メラミンに汚染されていない安全、安心な商品ということで、売上げは好調に推移し、品質の高さは、中国におけるマーケットのバイヤー、更には消費者からも評価されるようになりましたが、食の安全、安心に対する目は、国内外とも厳しくなりました。
三番目は「米国を震源地とした金融危機」に関わる影響です。

金融危機がもたらす世界的不況の当社への影響

では、わが、ヤクルトグループへの金融危機の影響について、本日は、少しご説明いたします。
一つ目は、当社が保有する投資有価証券のうち、株価下落による評価損ですが、日経平均が9千円台であれば、決算上に大きな影響は出てこないでしょう。

二つ目の影響は、「為替」です。
私どもの国際事業における海外法人との決算上の為替レートは、毎月末日の各国の通貨と円の為替レートを平均して使用しています。そのために、ドルと円の関係で説明するのは難しいのですが、当初の予測では、1円円安が進むと、連結の営業利益が、年間で約1億円増加する計算でした。
しかし、今は円だけが各国通貨に対して強い状況にあり、この円高がどこまで進むか、予測できない状況にあります。特に、当社利益の中でウェイトが大きいメキシコのペソと円の為替レートの影響が大です。最終的に、どの程度の影響を受けるのか現時点では、まだわかりませんが、今期の影響は今回の修正計画の範囲内と考えております。
メキシコ現地ベースの販売動向には、まだ変化はありません。むしろ昨年度より好調に推移しており、経費は増加しているものの来期以降も、売上げは期待できる状況です。また、2、3年後には、中国を中心に他の国のウェイトも、高まってきますから、決算に対するメキシコペソの影響は、減っていくものと考えております。

三つ目は、「進出国の消費動向」です。1997年、アジアの通貨危機のとき、インドネシアでは、売上数量が、約半分になり、世界合計で前年比91%になる痛手を受けました。しかし、今回は、状況が異なります。
なぜなら、BRICs(ブリックス)や、VISTA(ビィスタ)といった国々は、第一に、「米国との貿易、投資関係が以前と比べると弱くなっている」ということ。第二に、「成長パターンが、個人消費や設備投資などの国内需要にシフトしてきている」という点。第三に、「金融機関がサブプライム関連商品を余り保有していない」という三つの理由からです。
確かに、現在、当社の進出国の状況をみると、以前のような強烈なインフレや、経済混乱は、発生しておらず、当社商品の売上げも、まったく落ちてはいません。
今のところ先の新興国では、不況感もなく、内需の維持、または拡大が進行していますが、たとえ大きな経済問題が発生しても、売価政策などで十分乗り切れると考えています。

四つ目の影響は、日本国内の販売会社への影響です。今回の金融危機により、地方の金融機関の貸出圧縮が始まっております。ご存知のように地方銀行は、保有株式の評価損失や、回収不能となった各種の証券化商品などを保有しているために、自己資本が大きく毀損(きそん)されています。これは、地方の販売会社の経営にとっても、余り良い環境とは言えなくなってきております。
それだけに、現在、進めています国内販売会社の近代化が、重要となります。販売会社の機能、組織の近代化を、基盤の強化を、加速して進めてまいりたいと決意しております。

化粧品事業と医薬品事業への影響

五つ目は、化粧品事業と医薬品事業への影響です。
まず、化粧品事業は、売上げ規模も小さく、世界不況による影響も小さいでしょう。しかし、化粧品事業の将来は、乳酸菌の科学から派生した「肌の健康」に関する研究開発技術を得ることで、有望かつ、利益の見込める分野に成長していくと期待しています。上半期は、基礎化粧品「リベシィ」スキンケア4品の発売で前期を上回ることができました。来年から始まる中期3ヵ年計画の推進により、販売体制の強化を図り、事業を拡大させていきます。
医薬品事業につきましては、当社は「がん領域に特化」しておりますから、不況の影響が少ないかわりに、臨床試験などの研究開発費は、毎年増えていくことになります。
その中で、「エルプラット」の効能追加では、結腸癌アジュバント(術後補助化学療法)の承認が来年度、見込めるということと、胃がん治療において、第三相試験の準備に入りたいということを申し上げておきます。他にもカンプト関連も含め、医薬品売上げ、500億円を目標に、いろいろ準備をしております。ご安心ください。

結び

今回の金融危機をはじめとする大津波は、一時的に当社に影響を与えるかもしれません。しかし、私どもは、必ず乗り越えます。この誰も経験したことがないと言われています経済環境に、スピードを持って適切に対応いたします。
そこで、この機会に、グループ企業、各事業など、すべて見つめ直します。自分たちを今一度、厳しく見つめ直すように、各部門に一斉に指示を出しました。
この作業を私どもは、ヤクルトグループが、「世界の人々の健康に寄与する企業」としての使命感を抱き、「グローバル企業」として、今後も着実に成長するための、「見つめ直し作業」としていきます。
今後、見つめ直した結果につきましては、アクションプランも用意して、順次、速やかにお知らせしたいと思います。
このような環境下にありまして、当社に信頼を寄せていただいております皆様の期待を裏切らないように、配当につきましては、昨年並みの中間10円、期末10円の年間20円を維持します。また、自社株買いにつきましては、資金バランスとタイミングを計り、実施していくことを念頭に置いていますことを、最後に、お伝えいたしまして、私のご挨拶とさせていただきます。

株式会社ヤクルト本社
代表取締役社長
堀 澄也

トップへ戻る