人も地球も健康に Yakult

今後の経営展望について

~2011年3月期 第2四半期 決算説明会(抜粋)~

はじめに

冒頭にあたり、ご報告があります。それは、本年6月度に、世界の乳製品一日平均販売本数が、「3千万本を突破」したことです。これは、ヤクルト、75年の歴史始まって以来、初めてのことで、本年創業75周年にあたり、世界中のヤクルト従事者が一丸となって活動した結果であります。
今後は、3千万本にとどまらず、4千万本、5千万本へと拡大を続けていくよう、努力してまいります。

国内飲料食品事業

今上半期は、「3千万本突破」に牽引されるかたちで、国内の飲料食品事業も好調に推移し、乳製品のみならずジュース・清涼飲料も、計画を上回る結果となりました。
乳製品については、ヤクルト類が堅調な実績だったことに加え、「ジョア」全体でも計画を上回りました。
更に、本年3月、5年ぶりに復活させましたビフィズス菌飲料「ミルミル」は、「定番の復活ブームの先駆」となり、日経の「上期ヒット商品番付」に載るほどの好調さを示しました。10月からは、ミルミルブランドの第二弾、「ミルミルS」を投入いたしました。
今後、「乳酸菌シロタ株」を使用したヤクルト類やジョア類に加え、「ビフィズス菌ヤクルト株」を使用したミルミル類と、二つの優れた菌を柱に据えて、その価値を、さらにお客さまにお伝えしていこうと考えております。
また、製品作りを支えるものとして、中央研究所は、「森の中の研究所」をコンセプトとし、工事を進めてまいりました。本年3月には、「革新」的な「食品棟とエネルギー棟」が完成し、第一次の工事が完了しました。
そして、26年ぶりの本社工場となる「兵庫三木工場」が2013年春の完成を目指して、9月から工事が始まりました。高品質の追求と生産効率の向上を目的に、環境保全にも留意した最新工場が出来上がります。国内乳製品工場の「再編」はまだ途中ですが、本社工場5工場、子会社工場6工場の合計11工場体制を近い将来実現するよう計画しております。これで、次の時代の生産体制ができあがると考えています。

医薬品事業

そして、医薬品事業ですが、抗がん剤「カンプト注」は、既に国内外で特許が切れましたが、現在は、抗がん剤「エルプラット」を中心に、医薬品事業は、順調な成長を続けております。
「エルプラット」が好調な背景について簡単に触れておきます。
まず、進行・再発大腸がん治療において、より治療が容易な経口剤との組み合わせであるゼロックス療法(XELOX療法)が浸透してきたことがあげられます。
この使用スタイルの「変化」により今までの、フォルフォックス療法(FOLFOX療法)より、多くの患者さんの抗がん剤治療が可能になったことや、投与期間も伸びてきたことなどが好調の要因と推察されます。
さらに、がんの完治を目指す、「エルプラット」を用いた結腸がんの術後補助化学療法(アジュバント療法)が、徐々に広まってきたことも、その要因のひとつと思います。
そして、現在、推し進めている、「エルプラット」の「胃がん」に対する第Ⅲ相臨床試験も、順調に進捗しておりますことも、ご報告しておきます。

化粧品事業

その他事業の化粧品ですが、地盤固めを図りながら、将来への種まきという「革新」を進めております。
主力ブランドの一つである「リベシィ」を、その特長である乳酸菌由来の保湿成分を増量させ、11月にモデルチェンジいたしました。販売組織の強化は言うまでもありませんが、商品の優位性を強化することで、その良さをお伝えしていきたいと考えています。
そして、将来に向けての「革新」においては、「ikitel(イキテル)」ブランドの立ち上げです。これまでの訪問販売ではカバーできなかった20~30代をターゲットに、インターネット販売、受注生産を核とした「新チャネルの創造」にチャレンジしてまいります。

国際事業

中国

最初は、アジア、中国の現状です。
尖閣諸島問題の影響は、全くございません。また、今年度の初めに、上海で大手流通チェーンとの契約交渉が合意に至らず、納品が止まった問題も、100%解決し、すでに普段どおり、納品が行われております。中国におけるヤクルトの事業展開は、計画どおり、順調に進んでおります。
そして、来年には、広州、上海に続く中国3番目の「天津工場」が生産を開始します。これからも、中国につきましては、生産・販売のバランスを取りながら、活動してまいりますので、ご安心ください。

インドネシア

つぎにインドネシアですが、人口2億4千万人という世界第4位の人口大国です。最近、経済力も高まり、その将来性は、明るく、当社が期待している市場です。
課題は、国土が数多くの島に分かれているという、特異な地理的条件です。ここ数年、当社では、従来のジャワ島を中心とした事業展開から、スマトラ島をはじめとする販売エリアの拡大を進めてきました。その結果、今期も、9月までの1日当たりの累計平均が、171万本、前年比122%と順調に推移しております。

メキシコ

次に米州、メキシコです。
メキシコの経済は、上半期の実質GDP成長率が、5.9%と、改善傾向を示しています。
但し、そのけん引役となっておりますのは、主に輸出産業であり、個人消費の回復にはもう少し時間が必要かもしれません。
しかし、私どもは、このような状況下にあっても、「販売価格の見直し」、「販売組織の強化」など、怠り(おこたり)のないように各種の政策を、進めております。いずれ、米国経済が回復し、個人消費の高まりが生じてくると、それに伴ない、販売数量は飛躍的に増加してくるものと考えています。

アメリカ

アメリカについては、カリフォルニア州のファンテンバレー市に工場建設を決定し、2012年の生産開始に向けて準備に入りました。販売については、現在、全米6州での展開ですが、やみくもに販売エリアの拡大を優先するのではなく、当面は現在の販売地区での「ヤクルト」の浸透に、より力を注いでいく計画です。

欧州

最後に欧州です。
景気の低迷と共に販売本数が伸び悩んでいた欧州ですが、国によっては少しずつ明るさが見え始めてきた感触を持っています。依然として、他社は、店頭で大幅なディスカウントを行うなど、厳しい販売競争が続いています。しかし、当社は、価格戦争には巻き込まれることなく、着実な販売活動、ロイヤルユーザー作りに取り組んでまいります。

研究開発関連

最近、お話ししていなかった研究開発関連の話題です。

コーデックス

一つ目は、7月上旬、ジュネーブにて開かれました「第33回国際食品規格委員会(コーデックス委員会)総会」において、「発酵乳を基にした飲料(drinks based on fermented milk)」という新たな食品の国際規格が採択されましたことをご報告しておきます。この新たな規格に当てはまるのは、「乳製品乳酸菌飲料」であり、まさに、私どもの「ヤクルト」や「ヤクルト400」などが該当いたします。日本で開発した食品が、国際規格として認められたことは初めてのことで、今回、日本政府が1994年から主張してきたことが通ったことは大変喜ばしいことです。また私どもにとっても、世界中でヤクルトの類似品が、多数みられる中、「乳製品乳酸菌飲料がカテゴリーとして国際的に認められた」ことと、「商品の規格が明確になった」という2点が、歴史的にみても、非常に大きな意味を持つと考えています。

TOSムピロシン培地

二つ目は、ビフィズス菌に関して、大きなニュースがありました。これは、当社が開発しました「TOS培地」に抗生剤のムピロシンを添加した「TOSムピロシン培地」が、国際標準機構(ISO)、と国際酪農連盟(IDF)において、ビフィズス菌数測定の公定培地として認められたことです。当社で開発しました技術が世界基準となったことは、これまた、喜ばしいことであります。
また、これにより、日本の乳等省令の中でも、ビフィズス菌が、より正当な評価を受けるようになると考えております。

ガラクトオリゴ糖

三つ目は、当社が開発した「ガラクトオリゴ糖」が、米国で「GRAS(高い安全性が認められる食品)」の称号を取得したことです。今後、その有効性と安全性をアピールし、広く普及を図っていきたいと思っております。

立体商標

「ヤクルト」の容器がガラス瓶から現在のプラスチック容器に変わったのは、昭和43年。以来、40年以上にわたって、親しまれてまいりましたが、その容器が、このたび立体商標として認められました。天声人語でも、「商品名以上に消費者の目を引くという知財高裁の結論は、信じたデザインを使い通す企業への敬意であろう」と評されました。ヤクルト容器の優秀性、独創性、斬新性が、改めて認識されたことについて、たいへん嬉しく思っております。

ヤクルトの長期飲用試験

そして、もうひとつ、重要なご報告があります。
インド国立コレラ・腸管感染症研究所においては、「ヤクルト」を用いて、世界的にも前例のない大規模な長期飲用試験を実施し、その結果、「ヤクルトが、衛生環境の悪い地域での『小児急性下痢症』の発症予防に効果がある」ということを明らかにしたということです。
インドでは、5歳未満の小児が年間183万人も亡くなっており、その原因の約13%にあたる約24万人は下痢症であると報告されています。この下痢症に、「ヤクルト」の継続飲用が有効であると示されたことで、「ヤクルト」の飲用意義が世界的にも強く裏付けられました。

おわりに

以上、世界の人々の健康づくりに貢献したいという想いは、果てることがございません。決算上は、景気や為替などによる影響を受ける時もあるでしょうが、健康を願う多くの方々へ、ヤクルトの価値を、正しくご理解していただくように今後も活動してまいります。この決意をお伝えして、私の挨拶とさせていただきます。
ありがとうございました。

株式会社ヤクルト本社
代表取締役社長
堀 澄也

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