人も地球も健康に Yakult

今後の経営展望について

~2017年(平成29年)3月期 第2四半期 決算説明会 11月11日(抜粋)~

はじめに

根岸でございます。
本日、東京証券取引所におきまして、平成29年3月期第2四半期決算を発表させていただきました。
第2四半期決算の内容につきましては、国内での乳製品売上げは好調に推移したものの、円高による為替影響ならびに薬価改定による影響により減収・減益となりました。
しかし、日本および海外を併せた全世界の乳製品販売実績は、順調に実績を積み重ねています。8月と9月には、単月の1日当り平均販売本数が、初めて4千万本を超えることができました。これからも、全世界でヤクルトファンを増やしていきたいと思います。
併せて、本日、通期業績予想についても見直しを行いました。修正後の通期業績予想は、売上高3,790億円、営業利益340億円といたしました。
売上高、営業利益とも下方修正でありますが、その最も大きな要因となったのは、為替を9月までの実績に置き換えたことによるものです。

各事業の取り組みについて

国際事業

持分法会社を含む海外事業所合計の、乳製品販売本数は、全ての月で前年を上回り、安定的な成長が続いています。今年度は需要のピークとなる9月に加え、8月も単月の1日当り平均販売本数は3千万本を上回ることができました。期末に向けて、年間累計の販売本数100億本超えを達成できる見込みで推移しています。

アジア・オセアニア地域

アジア・オセアニア地域は、連結子会社8カ国、総人口約29億人が住むエリアです。現在は、そのなかで約10億人、約35%の方を販売対象として事業を展開しています。

中国

国際事業における第1四半期、つまり1月から3月の販売本数の伸びは弱かったものの、その後は回復基調を示しています。私たちの中国事業は、総人口13億人に対して、ようやく半分の6億6千万人の人々を販売対象にできたところです。今後も、市場の深耕・拡大を通じて、安定的な成長を目指していきたいと思います。そして一方では、新たな商品展開も進めています。昨年10月には低糖タイプの商品「ヤクルトライト」を、広州ヤクルトに導入しました。1月からは販売エリアを少しずつ拡大し、中国の全ての拠点を対象に取り扱いを広げているところです。お客様からは、商品を選択できるようになったと、好感を持って受け入れられています。

インドネシア

1日当りの販売本数の伸び率は、インドネシアが最も成長著しい事業所です。成長の原動力としては、販売チャネル数の増、つまりヤクルトレディおよび納品店舗の数が増えていることがあげられます。但し、販売チャネル数の増加に加え、ヤクルトレディおよび店舗当りの売上を高めていくことも重要です。このため宅配チャネルでは、ロイヤルカスタマーづくりに取り組み、ヤクルトレディの高いレベルでの安定収入づくりを進めています。また、店頭チャネルでは、店舗に対するきめの細かいサービスができる、ルートマンづくりに取り組み、店舗当りの売上向上を進めています。

米州地域

連結子会社3カ国、総人口約6億5千万人が住むエリアです。現在は、そのなかで約2億7千万人、約40%を販売対象として事業を展開しています。

ブラジル

米州地域において、進出が最も古い事業所がブラジルです。2年後には創業50周年を迎えます。リオ五輪に沸いたブラジルですが、国内経済はマイナス成長が続いています。この影響により、当社事業も足元の業績では、若干苦戦を強いられています。外部環境は厳しい状況ですが、新たな商品展開として、健康志向のより高い方を対象に、7月にヤクルト40ライトの導入を行いました。この新商品を起爆剤として、業績向上につなげていきたいと考えています。

メキシコ

メキシコも進出から既に30年以上経過した歴史のある事業所です。以前にも話しましたが、創業以来前年の販売実績を一度も下回ったことのない安定成長が続いています。営業現場では、きめの細かい販売基盤の強化を推し進めると共に、行政機関等との提携活動を通じた社会貢献活動も推進することで、ヤクルトのブランド力アップを図っています。今後も安定的な販売本数の拡大を目指していきます。

アメリカ

米州地域の最後は、最も大きな人口を抱える国、アメリカです。
2007年から本格的な事業展開を開始し、主に米国6州でお客様づくりを行ってきましたが、プロバイオティクスに対する理解が徐々に広がってきたことから、中西部を中心に大手流通チェーンを通じた販売エリアの拡大に取り組んでいます。営業組織の体制強化を図り、従来にも増して新たなお客様作りに注力していきます。

欧州地域

連結子会社6カ国、総人口約2億7千万人が住むエリアで店頭チャネルを通じた事業を展開しています。
欧州での事業は、1994年のオランダ進出から20年以上が過ぎましたが、2012年以降、全てのプロバイオティクス製品に対する、ヘルスクレーム(健康強調表示)規制により、新たなお客様づくりでは苦戦を強いられてきました。
しかし、今年度に入り、広告宣伝を増やすと共にサンプリングなどの地道な活動を強化した結果、販売実績は上向きで推移しており、底打ち感が出ているのではと思っています。依然として外部環境は変わっていませんので、厳しい状況ではありますが、ヤクルトの良さを感じて下さるリピートユーザーに加え、新たなお客様づくりも注力していきたいと思っています。

医薬品事業

当社の医薬品事業は、本年4月の薬価改定により、医薬品全体で10%台半ばの薬価引下げを受けたことから、売上高および営業利益に大きな影響が生じています。
このような状況を踏まえながら、当社の主力製品であるエルプラットについて説明したいと思います。

エルプラットの後発品による置き換え率は、9月末で約27%となりました。3月末が約21%でしたから、半年間で6%置き換えが進んだことになります。今後も置き換えは進むと予想されますが、国民医療費は13年連続で増え、2015年度の概算医療費は41.5兆円、なかでも調剤費は9.4%増の7.9兆円という状況においては、後発品の置き換えがある程度まで進むことは、やむを得ないと思っています。

但し、当社のエルプラットと後発品を含む、抗がん剤オキサリプラチン市場は、4月から9月までの数量ベースで約11%の市場拡大が続いています。通常は後発品が上市すると、先発品が後発品に置き換わることはあっても、市場自体が拡大することはありません。しかし、オキサリプラチン市場では、「胃がん」および「すい臓がん」に対する使用量が増えているために、市場が拡大しているという背景があります。
後発品も、既に胃がんやすい臓がんの適応症を取得していますが、医療現場においては、まだ薬剤投与のノウハウが十分に蓄積していません。当社は先発品メーカーとして、胃がんに関する情報提供力に優位性がありますので、この強みを活かして、大きな需要が見込まれる胃がん分野での、積極的な活動を展開していきたいと考えています。

また、当社が取り扱う後発医薬品については、使用促進を推し進めるという国の方針に基づき、引き続き市場シェアの拡大を図っていきます。
医薬品事業を取り巻く環境は、今後ますます厳しくなってくることが予想されます。しかし、当社では、これまで培ってきたがん領域に特化した強みを活かして、新薬開発をはじめ新たな後発医薬品の獲得に努めると共に、更にはがん専門MRの生産性を高めるための、さまざまな施策を検討していきたいと考えています。

国内飲料食品事業

乳製品の販売実績は、第1四半期に引き続き、第2四半期に入っても好調に推移し、第2四半期までの販売実績は前年比104.9%となりました。その背景には、プロバイオティクス市場全体が拡大するという追い風に加え、この春から「ヤクルト」のブランド価値を高めるための、積極的な広告展開の効果が寄与していると考えています。
個別の商品の動向ですが、宅配チャネルにおける基幹商品の「ヤクルト400」ならびに「ヤクルト400LT」は、価格改定を5月30日に実施いたしました。価格改定の前から、既存のお客様に対する継続飲用の働きかけと新たなお客様づくりの活動が奏功し、価格改定後も販売本数は前年を上回り、第2四半期までの販売実績は前年比103.5%となりました。
また、店頭チャネルにおいては、「Newヤクルト」ならびに「Newヤクルトカロリーハーフ」を、乳酸菌シロタ株の価値普及活動のコア商品として活動に力を入れてきました。その結果、第2四半期までの販売実績は前年比112.8%と、2桁成長となりました。本数増加の要因は、お客様の数が増えていることに加え、コンビニエンス向けの6本パックや量販店向けの10本パックが大きく寄与しています。

好調な乳製品の販売実績を支えてきた広告展開について、少し触れたいと思います。上期の広告展開としては、4月から「ヤクルト広告3本の矢」として、「ヤクルト400」、「ヤクルトレディ」、「研究開発・技術力」の広告放映を集中的に行うことで、企業メッセージの発信を強化し、企業価値の向上ならびに販売活動のバックアップを強化してきました。また、テレビだけではなく、文字媒体として新聞を使った広告「続ける理由があり過ぎる」、「確かな理由がありすぎる」も、お客様から大きな反響を頂きました。

下期の広告展開については、引き続き「ヤクルト広告3本の矢」の新たなバージョンによるテレビCMを10月に集中して実施し、企業メッセージの発信強化、企業価値の向上ならびに販売活動のバックアップを推し進めています。
そして、テレビでの広告と併せて、実際の商品を数多くの方に手にして頂く場面づくりも進めていきます。9月から開始した「Newヤクルトカロリーハーフ全国サンプリングキャラバン」では、商品サンプリングに出前授業やフィルムショーイングを連動させ、菌の科学性の訴求活動を全国各地で行っています。
そして、ジョアについては、今月から新たなディズニーデザインパッケージとして「ツムツム」が仲間入りしたことを受け、現在テレビCMを展開中です。今年14年目を迎える「ディズニーオンクラシック」の全国28会場では、商品サンプリングも行い、来場されるゲストと直接コミュニケーションを図っています。

国内事業は、今期から本格的な市場拡大を図るべく、大規模なマーケティング投資を推し進めてきました。これまでのところ順調な滑り出しができていると感じています。しかし、ヤクルトのブランド価値を高めていくためには、時間がかかるものだと思っています。このため、「工場での安全安心な製品作り」、「新たな研究施設における更なる知見の発表」などを積み上げていくと共に、「ヤクルトレディや店頭における価値普及活動」もレベルアップと活性化を推し進めてまいります。そして、ヤクルトのブランド価値を、お客様に判り易くお伝えするために、メディアを通じた広告宣伝も、複数年単位で継続していきたいと考えています。

むすび

当社は長きに渡り菌の研究に力を注ぎ、プロバイオティクスのパイオニアとして歩んできました。その結果、日本ではプロバイオティクスに対する理解は進み、国もトクホという機能性表示を認めています。しかし、世界を見渡すと、先進国の欧州においても、残念ながら機能性表示はまだ認められていません。
そこで、皆様もよくご存知の総合科学雑誌『ネイチャー』を発行するネイチャー社の協力を得ながら、プロバイオティクスを世界に広める活動を行っていきます。

今月初めには、ネイチャー社と共催してヤクルト中央研究所オープニングカンファレンスを実施いたしました。カンファレンスでは、ネイチャー社との共同企画として、第1部は世界トップクラスの科学者の講演とパネルディスカッションによる「nature café(ネイチャーカフェ)」、第2部は記念講演を行いました。一企業のイベントに対し、ネイチャー社がタイアップするということは異例のことです。科学に裏打ちされたヤクルトを、ネイチャー社が評価してくださったから実施できた共催イベントだと思っています。

この内容については、後日「ネイチャー」、「サイエンティフィック・アメリカン」や「日経サイエンス」に採録記事として掲載される予定です。世界中の研究者に対して、プロバイオティクスに関する情報発信を行い、理解促進を図ると共に、「科学するヤクルト」を多くの方にご理解頂けると思っています。ご興味のある方はご覧になっていただきたいと思います。

ご清聴ありがとうございました。

株式会社ヤクルト本社
代表取締役社長 COO
根岸 孝成

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