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クリエーター・伊藤有壱さんに聞く:ミルミルタウンの魅力

CMのミルミルタウンを作りあげたのは、クレイアニメーションのアーティストとして世界的にも有名な伊藤有壱さん。 スタジオでのクレイ(粘土)の人形を1コマ1コマ撮影する気の遠くなるようなCM制作の合間、 伊藤さんにミルミルタウンの魅力について聞きました。

  • 伊藤有壱さんプロフィール

強烈だった初代ミルミルのCM

子どものころ、ちょうど初代のミルミルのクレイアニメのCMが流れたんですよ。グニャグニャと粘土がカタチを変える不思議なCMは非常に強烈で、自分の潜在的な意識の中にずっと残っていました。僕がクレイアニメをはじめるきっかけのひとつになったのかもしれませんね。多くの人が「ミルミルのCM」といったら、「ああ、あれね。」と思い出せると思います。そういった名作の続編を作る機会をいただけたのは、本当にうれしいことだし、光栄でもあり大変なプレッシャーでもありましたね。

瞳の中の星がキャラをイキイキさせる

新しいCMを作るにあたり、昔のCMのちょっと見ただけで引き込まれるような世界観、言葉がなくても通じるエネルギーというものは大切にしたいと思っていました。それに加え、現代ならではのボリューム感や空気感、そしてキャラクター世界の成長を表すために「ミルミルタウン」という街を核にしました。こだわりとして、キャラクターの瞳にキラリと光る小さな星を入れています。瞳が輝くことで、キャラクターに性格が宿るのです。小さい子どもたちがこのCMを見て、20年後、30年後、どこか記憶に残っていてもらえるとうれしいですね。

1秒24コマを精密に1コマずつ撮影

今回はミルミルタウンということで、エキストラも含めて50体以上の人形を全部、クレイ(粘土)で作りました。CMは、僕だけの力でなく、僕のスケッチから人形を作るこぐまあつこさん、実際に動かすアニメーターの峰岸裕和さん、オカダシゲルさん、美術や撮影のクルー・・・と非常にたくさんのスタッフが関わっています。しかも、それぞれが全体を理解していなければならなくて、高度な技術と連携が必要とされます。熟練された技術があるからこそ、素朴な仕上がりになるんですよ。粘土はさわると指紋がついたり、動かすとヒビが入ったりするんですが、それを修正しながら、撮影していきます。1秒間に24コマ、15秒のCMで360コマを綿密な計算をしながら地道に撮っていきます。

粘土は立体の絵の具

僕は元々、粘土遊びが好きだったわけでもなく、ずっとアニメをやっていたわけでもないんです。それなのに粘土という素材に惹かれたのはなぜか・・・、ある時、粘土って「立体の絵の具」だ!ということがわかったんですね。いろんな色の粘土を混ぜることで無限に色を作り出すことができます。そして、もうひとつの理由が、さわった痕跡が、そのまま自分の作品になる非常に誠実な素材だという点。後から処理してうまくごまかしていくというのとは真逆のものです。コンピュータ上で作った3DのCGだと、クレイアニメの素朴な力強さというのは絶対に出ませんよね。僕にとって粘土という素材はまだまだ魅力の尽きない素材です。

クレイアニメのもつ「掌(たなごころ)」

存在感やこだわりをどこに感じてほしいか、など目的にあわせて、今回もCGとクレイアニメとを使い分けています。クレイアニメとCGはまったく別のもの。クレイアニメじゃないと出せないものがあるんですね。日本語には「掌(たなごころ)」という言葉があります。「手の心」という意味で、手を道具としてアウトプットされるものの良さを表す言葉です。これは、ヨーロッパのクラフトマンシップにも通じるのではないでしょうか。手を通じて作られるクレイアニメにはそういった良さ、味があります。そんなスピリットを見る人に感じてもらえると、うれしいですね。

優秀なスタッフなくしてはできなかった作品

素晴らしい作品は、もちろん、優秀なスタッフなくしてできないものです。同じ台本でも、役者によって芝居が変わるように、それと同じことがアニメーターによっても起こります。信頼のおけるスタッフだから、ただ台本通りではなく、もっともっと細かいニュアンスまでを表現してくれる。それは、造形スタッフや撮影チームも同じです。今後も新しいエピソードを作っていけたらいいですね。