ヤクルトグループをとりまく事業環境は、国内においては少子高齢化やライフスタイルの多様化、海外においては新興国市場の成長と健康志向の高まり、グローバル競争の激化など、大きな変化が起きています。さらに、2015年にはパリ協定およびSDGs(持続可能な開発目標)が採択されるなど、持続可能な社会の実現に向け、世界が取り組むべき目標が示されています。
当社は、「私たちは、生命科学の追究を基盤として、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献します。」という企業理念のもと、「予防医学」「健腸長寿」「誰もが手に入れられる価格で」という「代田イズム」に基づき、食品、医薬品、化粧品の開発・製造・販売などの企業活動を行ってきました。企業活動そのものがCSRであるという考えのもと、これからも事業環境の変化や社会課題にしなやかに対応していきます。
2016年度は企業経営の長期ビジョン「Yakult Vision 2020」第2フェーズ(2014~2016)の最終年度でした。第2フェーズ終了時(2016年度)の乳製品世界平均販売本数は3,737万本(対2013年度差500万本増)、連結売上高は3,783億円(同280億円増)、連結営業利益は372億円(同52億円増)となり、それぞれ伸長しました。
食品事業は、広告展開を強化したことや、プロバイオティクスに対する関心の高まりを受け、好調に推移しました。国際事業は、為替の影響を受けましたが堅調に推移し、中国やアメリカなどで販売エリアが拡大しました。2017年3月には、中東ヤクルト販売株式会社を拠点に、中東地域での販売を開始し、これにより日本を除く37の国と地域に販売網が拡大しました。現地の法令や国際ルールを遵守することはもちろんのこと、文化慣習や人権問題に十分に注意を払いながら、事業を推進していきます。
2017年4月からは最終フェーズである第3フェーズが始まりました。持続的成長に向けた変革期間と位置づけ、目標達成に向けて全力を尽くしていきます。
2016年4月、当社は、腸内フローラやプロバイオティクスなどの基礎研究および食品、医薬品、化粧品の製品化研究を加速させ、これらの研究活動を通じ、科学技術の推進や社会の発展に寄与するために、中央研究所をリニューアルしました。腸内フローラやプロバイオティクス分野における基礎研究をはじめ、製品への応用研究、安全性に関する研究にさらに注力していきます。
中央研究所のリニューアルに伴い、2016年度を「サイエンスイヤー」と位置づけ、さまざまな学術イベントを開催しました。これらを通じて、研究者の方はもちろん、一般の方々に対しても、プロバイオティクスに関する知識を深めていただくとともに、「科学するヤクルト」をご理解いただけたのではないかと思います。
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共同研究も引き続き進めています。これは、国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在する宇宙飛行士の免疫機能や腸内環境に「乳酸菌 シロタ株」が及ぼす影響について検証を行うものです。2017年度からISS に長期滞在する宇宙飛行士がプロバイオティクスを継続摂取し、宇宙環境での免疫機能および腸内環境に及ぼす効果を科学的に検証する、世界初の宇宙実験を開始しています。この研究を通じて、お客さまの健康増進につながる知見が蓄積され、ひいては予防医学の発展に貢献できればと考えています。
ヤクルトグループは、世界で8万人以上のヤクルトレディによる宅配システムを中心とした健康に役立つ商品のお届けだけでなく、健康的な生活習慣の定着に向けた啓発活動や、地域貢献活動にも取り組んでいます。
国内においては、おなかの健康をテーマにした「出前授業」を積極的に展開し、2016年度の参加者は、20万人以上となりました。また、自治体等と「愛の訪問活動」の契約を結び、約4万1,000人の一人暮らしの高齢者を訪問するとともに、全国785の自治体や警察署などと「見守り・防犯協力活動」の契約を締結し、安全・安心で暮らしやすい地域社会づくりに貢献しています。
海外においても、アジア諸国を中心にコミュニティの女性への就業機会を提供するとともに、健康に関する啓発を行い、地域社会の活性化に貢献しています。
ヤクルトグループでは、2001年度から「ヤクルト本社環境行動計画」に基づいた取り組みを進め、2012年度には「CSR基本方針」を制定し、企業としての持続的成長を通して社会的責任を果たしてきました。そして、2016年度には、I S O 26000の中核主題に則って重要テーマを策定した「ヤクルトC S R行動計画」を発表しました。今後は重要テーマに沿った具体的な行動目標を策定するとともに、グローバル企業であることをより強く意識し、ヤクルトグループ全体を通じたCSR活動を強化していきます。
ステークホルダー(関係者)の皆さまには引き続き、ヤクルトグループへのご支援と忌憚のないご意見を賜りますよう、よろしくお願い申しあげます。
2017年9月
代表取締役社長
根岸 孝成
当社は企業理念を実践し、企業として持続的に成長することを通じてCSRを全うしていきます。その具体的な取り組みの上位概念として、「CSR基本方針」を2012年4月1日より施行し、全社が取り組むべき方向を定めました。
私たちヤクルトグループは、企業理念に基づいた企業活動を通じて、グループを取り巻くすべてのステークホルダーから信頼されるよう努力し、共生していきます。
当社は、2015年度より、CSRのグローバルスタンダードであるISO26000に則して活動の体系化を図り、推進しています。2017年度は、ISO26000の中核主題に則って「ヤクルトCSR行動計画」の重要テーマを策定し、これをもとに関連部署が具体的な目標を計画しています。今後、具体的な内容や進捗を、ホームページ上や当レポートで公表する予定です。
ヤクルトCSR行動計画 | |
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ISO26000の中核主題 | 重要テーマ |
組織統治 | コーポレートガバナンスの実践 |
コンプライアンスに則った事業の推進 | |
企業情報の開示と社会とのコミュニケーション | |
守秘義務の徹底 | |
人権 | 人格と人権の尊重 |
多様性の推進 | |
労働慣行 | ワークライフバランスの推進 |
職場安全衛生の推進 | |
多様性の推進 | |
女性の活躍推進 | |
環境 | 低炭素社会の実現 |
資源の有効活用 | |
生物多様性の保全と活用 | |
公正な事業慣行 | 公正・健全な取引の推進 |
CSR調達の推進 | |
消費者課題 | お客さま第一主義 |
お客さま個人情報の保護 | |
安全・安心な商品の提供 | |
コミュニティへの参画 及び コミュニティの発展 |
地域の文化・慣習の尊重 |
地域課題解決への活動 | |
社会貢献活動の推進 | |
地域社会との関係強化 |
国内・海外のヤクルトグループ企業は、当行動計画を参考にして、CSR活動を推進していく。
制定 2017年4月1日
CSR担当役員を委員長とする「CSR推進委員会」を設置し、CSR推進方針、推進策の協議ならびに進捗管理等を行っています。本会議での検討事項は必要に応じて執行役員会議に上程します。