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ストレス社会の処方箋

毎日の生活の中で、ストレスはつきもの。ただ、それが強くなり、気持ちが沈み、ミスが目立つようになり、学校や職場に行けなくなるという人が増えているそうです。誰もが感じるストレスとどう付き合えばいいのか、どうしたら心の健康を保つことができるのか。
産業医学・産業精神医学がご専門の筑波大学の笹原信一朗先生に、ストレスについて、また、その対処法についてお話をうかがいました。
先生は、研究者としてのご研究と、精神科医としての職場や大学などでの診療実践とを両輪として、「自殺ゼロ、うつ病ゼロ」をめざして活動を続けていらっしゃいます。

笹原 信一朗先生プロフィール

今、職場のうつ病が増えている

現在、どのようなご研究や診療をされているか、教えてください。

私は、「予防医学」といって、病気の予防を専門に研究をしています。今、職場で、うつ病をはじめとした「メンタルヘルス不全」がとても増えています。そこで、特に職場でのうつ病を予防するということを行っています。
うつ病などの予防と回復には、①病気にならない、②早めの発見、早めの対応、③治療とリハビリによって職場に復帰する。という3段階があります。
ところが、この頃、職場に復帰できないという方が増えているんです。
うつ病などの精神的な疾病による休業人口は、2004年の時点で推定474,000人、その休業月数は5.2か月という調査がありました。さらに、2009年にはうつ病を中心とする気分障害の患者数は全国で105万人を超え、最近は20〜30代の若者のメンタルヘルス不全が激増しているという報告があります。
そういった現状を予防し回復させる方策を中心に研究しています。

職種によって違う、
メンタルヘルス状況

それは衝撃的な数字ですね。本人にとっても、会社にとっても、社会全体にとってもつらい現実ですね。

ただ、職種によって、メンタルヘルスの状況はかなり違うんです。
2012年の労働者健康状況調査によると、「過去1年間においてメンタルヘルス上の理由により、連続1か月以上休業または退職した労働者数の割合」を調べた結果、突出して高いのが、情報通信業、いわゆるIT業界で、逆に低いのは農業や林業。その間には、10倍もの開きがあったんです。
私が担当している職場でも、実際、IT系の会社と農業などの会社では違います。
農業も林業も、もちろんそれぞれノルマもありストレスもあるはずですが、IT業界と比べてこれほど大きな差が出ていることに驚かされます。

農業や林業では全体の3.1%なのが、情報通信業では31.2%とその割合は10倍以上で、ほぼ3人に1人という割合になっている。(参考文献_1)
(出典:「復職に影響する環境要因の検討」より)

スウェーデンで生まれた、
自然の中でのリハビリテーション

そんなとき、スウェーデンで開発された「ネイチャー ベースド リハビリテーション_Nature Based Rehabilitation (NBR)」というものがあることを知り、現地へ行って共同研究を行いました。これは、自然を活用したリハビリテーションなんですが、その結果、このグラフのように、このリハビリテーションを行った2003年ごろから、ストレス関連の病気欠勤者が劇的に減っているんです。

スウェーデンでの研究。2003年からの取り組みによって、急激に増加していたストレス関連の病気による欠勤者が急激に減っていることがわかる。(参考文献_2)
(出典:「復職に影響する環境要因の検討」より)

病気からの回復には段階があって、最初はゆっくり家で休んでいていいんですが、徐々に回復してくるとヒマを持て余すようになります。そして、たとえばちょっと遊びに行ったりして、そこをたまたま職場の同僚に見られたりして気まずい思いをする。そんなこんなで出かけられなくなって、活動できなくなってしまうということがある。
実は、休んでいる人にとって、休むには休みやすい環境があり、活動するには活動しやすい環境というのがあるんです。うつ病などの回復には、その環境を準備するほうがよいということがわかってきたんです。

自然の中で回復していく

たしかに、ただ家で休むだけでは、心のトラブルは回復できそうもないですね。

そこで生まれたのが「ランドスケープ デザインの考えを取り入れた自然を活用したリビリテーション」です。うつ病のリハビリに適した「リハビリガーデン」を用意するんです。
ここで、その人の回復段階に合わせて活動することで、復職率が高く、再発率が低いという成果が出ています。

スウェーデンでの「リハビリテーションガーデン」。広い敷地に回復段階に応じた施設が作られている。(参考文献_3)
(出典:「復職に影響する環境要因の検討」より)

これがその「リハビリテーションガーデン」です。まずは、自宅でしばらく休んだあと、最初はこの左側の手つかずの自然の中で一人静かに過ごす。少し回復してきたら、人のいる右側のエリアで、ガーデニングをしたり作物を育てたり、他の人と共同作業をするというように、段階的に活動をしていき、職場に戻るという流れです。
このリハビリテーションは、抗うつ剤などの薬を飲んで自宅で休んだ人と同じくらいの効果があるというデータが得られています。さらにスウェーデンでは、このシステムが、医療制度として認められています。医師がこのシステムを処方すると、2〜3か月ここに通い、職場に戻るという流れになっているんです。
じっさい、このシステムを体験した人は、その期間が長いほど、もとの仕事に戻れる可能性が高まるというデータもあるんです。

日本での実践

それはとても素敵な治療法ですね。日本ではどうでしょうか?

日本はとても自然豊かな国なので、同じようなことができるのではないかと、模索しています。
私が勤務している筑波大学は、とても緑豊かな環境なので、リハビリガーデンを作っての実践ができるのではないかと考えています。残念ながら、今はコロナ禍のため中断しているのですが。

また、千葉に「園芸福祉ファーム・おーい船形」という、障がいのある方や高齢の方が運営している農園があります。この農園に、実際にうつ病で会社を辞め、ここでボランティアスタッフとして活動していたら、とても元気になって、うつ病がよくなったという方がいらっしゃるんです。そこで、お話を聞いたりデータをとらせていただいたりしました。
その結果、「自然に触れることで心身の健康によい影響がある」ということを実感されている方が多いことがわかりました。

千葉県にある「園芸福祉ファーム・おーい船形」での農業作業のようす。右から2番目が笹原先生。(参考文献_4)
(出典:「復職に影響する環境要因の検討」より)

自然が人に与える力とは?

森林浴などで心が回復するのは、どのようなメカニズムなのでしょうか?

ドイツでの研究で、1時間自然の中を歩いた人と、1時間ビルのある街を歩いた人に、「恐い顔を見せる」という不快な刺激を与えたところ、自然の中を歩いた人の脳は街を歩いた人と比べて反応が和らいだというものがありました。
農業などに従事している方がうつ病などになりにくいというのも、自然の力だと考えられます。もちろん、農業などでも、ストレスはあるはずですが、自然に触れることで、脳によい影響があるのだろうと考えられます。

自然というのは、脳に対して多彩な刺激を与えます。みなさんも、森を歩くとさまざまな刺激を受けるという経験があると思います。植物の香り、鳥のさえずりや風が木々をゆらす音、そういう五感を刺激することがとてもよいのだと思います。

ストレス対処力の「SOC」とは?

うつ病にまでなっていなくても、ストレスの多い現代、日々のストレスには、どのように対応するのがよいでしょうか?

そこでキーワードになるのが、「SOC」です。
「SOC」には正反対の2つの意味があり、1つは「Sense of coherence」、もう1つは「Sense of chaos」。同じ「SOC」ですが、その「C」、前者の「コヒアレンス」は一貫性とか脈略という意味、後者の「カオス」は混沌・混濁という意味です。ストレスに直面したときに、ちゃんと順序立てて対応できるか、混沌の中でもがくのかという大きな違いがあるのです。
たとえば、自分のデスクが、整理されていて必要なものがすぐ出せる状態と、ごちゃごちゃしていて何がどこにあるかわからない状態というイメージです。
1つの課題に出合ったとき、前者は必要な物や行動がわかり、順序立てて積極的に対応できるけれど、後者は、必要な物も見つからず先が見えないのです。前者は、課題を解決してスキルをアップしていくのに対して、後者はうまく取り組めず、ストレスをかかえていきます。
それと同じで、何か困難にであったときに、どちらの「SOC」か、で大きな違いが生まれます。

ストレス対処能力がアップする森林浴

どうしたら、「コヒアレンス」のほうの「SOC」を高めることができるのでしょうか。

森林散策をよくする人は、「Sense of coherence」が高いという研究結果があります。
ストレス対処力と森林浴との関係を調べる大規模な調査研究を、茨城県つくば市の労働者を対象に、無記名自記式のウェブ調査を行い、6,466人(平均年齢42.7歳)のデータを解析しました。
その結果、森林散策と緑地散歩の頻度で、週1回以上、月1~3回、年1~数回、ほとんどしないと、それぞれ4つのグループについて、「SOC(Sense of coherence)」の高さの関連を調べたのが次のグラフです。森林浴の頻度によって、「SOC」が大きく違うことがわかります。

森林散策を週に1回以上する人は、森林散策習慣のない人と比べて、ストレス対諸能力が著しく高いことがわかる。(参考文献_5)

自分のペースで自然に触れる

森林散策の効果はすごいんですね。私たちは、どのように自然と触れるのがよいのでしょうか?

自然と触れるといっても、さまざまな形があります。元気がない人にいきなり山登りというのではなく、その人の状態に合わせて、ちょっと自然に触れるだけとか、元気になったら森に行ってみるなど、状態に合わせるのがいいと思います。
自然に触れる時間として、1週間に1時間くらいだと効果があるというデータもあります。さらに、たとえば、ふだん目を酷使している人は自然を眺める、騒音の中にいることが多い人は静けさの中にいるなど、その人に合った処方ができるといいなと考えています。

素敵なお話をありがとうございました。自分に合った形で自然に触れ、心も体もすこやかに過ごし、「SOC」をアップさせたいと思いました。

笹原信一朗(ささはら しんいちろう)

1974年東京都生まれ。筑波大学医学専門学群卒業後、同大大学院医学研究科を経て、現在同大学医学医療系産業精神医学・宇宙医学グループ准教授。同大学本部産業医・附属病院産業医。専門は、産業医学・産業精神医学・長寿医学。現在までに多くの職場の産業医として、「自殺ゼロ、うつ病ゼロ」を目指して、職場のメンタルヘルスに携わりつつ研究を続けている。著書に『精神科医が教える「心が折れない部下」の育て方』 (メディアファクトリー新書)などがある。

COLUMN コラム

ストレスには、
「内」と「外」を整える!

先生から、
「自分の外である環境が整うと、自分の中が整うということがあり、逆に、中が整うと外も整うということがあると思います。実際に、『双極性障害』という『躁状態』と『うつ状態』を繰り返すような病気の方がいらっしゃるんですが、そういう方には、お薬を飲んで『中』を整えることと、生活リズムを一定にするなど『外』を整えるという両方向の治療をすると効果があるんです。

ですから、食生活を整えて、腸内環境という『中』を整えることで、生活という『外』が整うということがあると思うので、『中』を整えることはとても大事だと思います。」
というお話をいただきました。

ヤクルトでも、一時的な精神的ストレス状況下にある健康な人に、ヤクルト独自の乳酸菌である「シロタ株」を含む飲料と、味や外見は同じで「シロタ株」を含まない飲料を毎日1本、8週間飲んでもらい、唾液中のコルチゾールというストレスを受けたときに増える物質の濃度を調べた研究があります。その結果、「シロタ株」を含む飲料を飲んだグループは、含まないものを飲んだグループと比べてコルチゾールの濃度が低く抑えられ、ストレス体感レベルも低くなっていたのです。

ストレス高めの今、体を中からも外からも整えていい状態をつくりたいですね。

「シロタ株」のチカラ