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おとなの健康図鑑VOL.3 ミステリー作家/新川帆立

「おとなの健康図鑑」では、さまざまな職業や趣味を持っている人が登場。やりたいことに夢中になっているおとなたちの、「好き」を支える日々の健康習慣をご紹介します。

今回は、ミステリー作家の新川帆立さんをピックアップ。弁護士、プロ雀士を経て作家に転身し、デビュー作『元彼の遺言状』は「第19回『このミステリーがすごい!』大賞」の大賞を受賞、ドラマ化もされました。多数の連載を抱えている新川さんに、健康の秘訣を伺いました。

暮らしに彩りをつくる仕事

今、どんな作品を書いていますか?

新川帆立さん(以下、新川):『ひまわり』という新聞連載小説を書いています。脊椎損傷で首から下がほとんど動かなくなった主人公が、音声認識システムで司法試験を突破して弁護士になるまでの話で、地元の宮崎日日新聞をはじめ、全国の地方紙10紙以上に掲載されています。11月からは読売新聞オンラインで別の連載が始まりますし、他に書き下ろし中のミステリーや単発の短編、エッセイなど月に8〜9本くらいの物語を書いていますね。

作家という職業は、どのような仕事だと思いますか?

新川:「コンビニで売っているグミを作っています」という意識でいます。

グミ……?

新川:小説というのはこの世になくてもよくて、おなかが膨れるわけでもないし栄養になるわけでもないし、役に立つわけではなく不要不急の極みみたいなもの。でも生活の彩りというか、普段の暮らしの中で一息つくときに手元にあるといいものでもあります。

自分にとっては、小説は必需品。でもエッセンシャルワーカーのように本当に生活に必要な職業が別のレイヤーであって、その人たちに対して作家は謙虚でなくてはいけないという気持ちがあります。小説を書く人は小説が好きすぎて小説第一主義になりがちですが、人が暮らしていくためにもっと大事な職業があるわけで、その人たちが作っている社会の片隅に置いてもらっているという意識で書かないと、手に取ってもらえる商品にはならないと思っています。

小説は人の暮らしの役に立たないという前提で書いてはいるのですが、デビューして読者さんから反響を受けることが増えて、実は役に立っていることがあるんだなと感じることもあります。今、連載している新聞小説について、「母が亡くなるまでずっと読んでいたので、続きはお棺に入れました」とご連絡をいただきました。人生の最後に読む小説が自分の書いたものでよかったのかと思いつつ、何かの役に立っていたのであれば、それはそれでうれしいなと感じました。

健康習慣01:毎日、7時間は寝る

月に何本も締め切りがあるとのことですが、忙しさを乗り切るために何かされていますか?

新川:とにかく、よく眠るようにしています。というのは、小説を書くのは肉体労働なんですね。脳も体の一部なので、脳がよく働くためには体を休めなくてはいけません。毎日、7時間は寝るようにしています。

寝る前のルーティーンはありますか?

新川:本を読みます。小説だとしっかり読み込んでしまうので、それ以外のジャンルで軽めの内容のものを電子書籍で。新書が好きで2日に1冊くらいは読んでいますね。本当はその時間を書く時間に充てないといけないかもですが……。

健康習慣02:ちゃんと、愚痴を言う

他に健康のためにしていることはありますか。

新川:愚痴をちゃんと言うようにしています。友だちにスマホのメッセージで伝えたり、月に1回、心療内科で定期的にカウンセリングを受けたり。作家はメンタルを病む人が多くて、一度そうなると2〜3年は書けなくなるし、体調は戻っても文体が戻らなかったりします。作家はメンタルを削って書いていて、それは野球選手にとっての肩のようなものなんです。使えば使うほど故障しやすくなるので、予防のために今から通っておくのが最大のリスクヘッジだと思いました。

あと、ノートにも書き出しています。愚痴もそうだし、打ち合わせのメモやプロットとか、すべてをまとめてこのノートに。物を書く人は周りのちょっとした言動からいろいろなものを受け取ってしまうから、それらを溜め込んでおくとよくないんです。といってもSNSに書き込むと大変なことになるので、愚痴を吐いてもいい場所で信頼できる人に聞いてもらうのが心の健康のために重要です。心が健康だと夜もしっかり眠れますしね。

健康習慣03:音楽を聴きながら、散歩をする

睡眠にメンタルヘルス、ご自身の健康にとても気を遣っていますね。

新川:そうですね、運動もよくしています。筋トレとヨガを週に1回ずつ、それに今日から空手を始める予定なんです。作家は座り仕事でそのせいで腰を痛める先輩作家を見ているので、予防のために鍛えようかと。

それと、作品を書き終わると必ず散歩に行きます。1日に3本、4本の締め切りがあるときは、そのたびに何度も散歩へ。私はオリジナル・サウンドトラックを作っていて、「この曲は自分のあの作品っぽい」と思ったらプレイリストに作品ごとに入れているのですが、それを聴きながら歩きます。加えて、飲み食いをしているときがいちばんアイデアが浮かびやすいので、コーヒーも一緒に。散歩+音楽+コーヒーが最強ですね。

散歩のときでも、なかなかのマルチタスクですね。

新川:何もしない、というのが苦手なので必然的にそうなってしまいますね。あと、自分の体の状態をチェックするようにしています。食事、睡眠、排便、どれも日々の様子から何か変わったことはないか、特に便は体からの便りで体調を見るのに重要なポイントなので、気をつけて見るようにしています。

事前の予防策としていろいろなことをされている印象があります。

新川:長生きしたいんです。あと30年、できれば50年くらいは書きたい。生きている間にあと何作、書けるのかと思ったら、体調を崩している場合ではないなと。

以前、弁護士をしているときに血尿が出たことがあって、でも自覚症状はなくて「こんなに元気なのになぜ血尿が?」と思いました。きっと心より先に体が悲鳴をあげたんでしょうね。転職してからは体調もよくなったのですが、最初に悲鳴をあげるのが排泄関係なんだなと気づき、それ以来、異常がないかを意識してチェックしています。

ヤクルトの創始者である代田 稔さんが提唱していた、まさに予防医学を実践されているんですね。それに、排便をチェックしたり腸のことを意識されたりしているのは「健腸長寿(腸を丈夫にすることが健康で長生きすることにつながる)」という考え方にも通じます。排泄だけでなく、食べることについて気をつけていることはありますか?

新川:私は人より多く食べてしまうほうで、嫌いなものがあまりなくて何でもよく食べます。乳酸菌が入っているものはおなかによさそうだなと思いました。海外に住んでいた頃からチーズ、特にミモレットが好きでおやつによく食べます。納豆も好きで、ほうじ茶でお茶漬けにするとおいしいんですよ。

もっとおもしろいものを書き続けたい

これからやりたいことを教えてください。

新川:小説を執筆するのがすごく楽しくて、とにかくたくさん書きたいというのが今いちばんの望みです。全体的にじわじわとうまくなっている気もするので、もっとおもしろいものを書きたいですね。

具体的には2系統あって、1つはハードボイルドっぽい硬派なもの、もう1つはドキドキワクワクの華やかなもの。それぞれの路線を書くつもりでいるし、さらに双方が複合する作品も書きたいなと思っています。『元彼の遺言状』シリーズはこれら2系統が複合している作品だと思うので、この続刊を11月から書いて2024年に刊行します!(宣言!)

新川帆立(しんかわほたて)

ミステリー作家、元弁護士、最高位戦日本プロ麻雀協会所属の元プロ雀士。2017年から弁護士として大手法律事務所に勤務。2020年に作家デビュー。2021年に弁護士を休職し、作家に専念。2022年4月に『元彼の遺言状』(宝島社)が、2022年7月に『競争の番人』(講談社)が立て続けにフジテレビでドラマ化。

新川帆立さんの著書。(左)『元彼の遺言状』、(中)『倒産続きの彼女』、(右)『剣持麗子のワンナイト推理』(すべて宝島社)

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