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便秘の症状と原因とは?

疾患腸内環境腸内フローラ便通

便秘で腸内に便が残る状態が長く続くと、腸内に悪い菌が増える原因となり、腸内フローラのバランスが乱れてしまいます。ストレスや生活習慣、筋力の低下や極端なダイエットによって食事量が減る、などの要因で便秘は起こりやすくなりますが、大腸がんが便秘を引き起こすこともあります。
何をしても便秘が改善しなかったり、激しい腹痛が長引いたり、といった場合は医師に相談してみるのが良いでしょう。ここでは、便秘の基準や原因、体への影響、日常生活でできる対処法、医療機関での治療について解説します。

監修
かなまち慈優クリニック 院長/医学博士・総合内科専門医・消化器病専門医 高山哲朗先生

便秘の基準とは?

便秘は「本来排泄すべき糞便が大腸内に滞ることによる兎糞状便(とふんじょうべん)・硬便、排便回数の減少や、糞便を快適に排泄できないことによる過度な怒責(どせき)、残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態」と2023年の日本消化管学会便通異常症診療ガイドラインで定義されており、医学的にはこの定義が用いられています。
排便の回数だけで便秘とは判断できません。また、便秘だと感じる不快感の基準も人によって異なります。
便が腸内に滞ることによって排便回数が減るだけでなく、便が硬く出づらかったり、一度で出しきれずに何度もトイレに行ってしまったり、毎日お通じがあっても残便感やおなかの張りがあってすっきりしなかったり…といった、排便がスムーズにいかない状態を便秘と呼びます。一方で、排便回数が少なくても、不快感や苦痛がなく日常生活に支障がなければ、便秘とは言えません。

便秘は男女ともになり得る症状ですが、一般的に男性よりも女性の方が便秘になりやすい傾向があります。水分や栄養を体に蓄えようとするはたらきや、腸のぜん動運動を低下させるはたらきなど、女性ホルモンの影響で便秘になりやすいため、便秘の女性は男性の約2倍もいると言われています。
ただし、加齢とともにその差は縮まり、70歳を超えると男女差はあまり見られなくなるようです。

便秘が起こる原因

便秘には、腸の腫瘍や手術後の癒着などで物理的に通り道が狭くなってしまう『器質性便秘』と、生活習慣やストレスなどが原因で腸のはたらきや排便の機能に問題が生じる『機能性便秘』があります。

多くの人が悩む一般的な便秘『機能性便秘』は、かつては「弛緩性・直腸性・けいれん性」の3種類に分類されていました。しかし現在は、症状に基づき「排便回数減少型・排便困難型」の2種類に分類されるようになっています。

週3回未満の排便が排便回数減少型の目安となり、排便困難型の目安は、直腸内の糞便の排出が十分でなく残便感がある状態です。

大腸通過時間検査や排便造影検査などの検査によって、排便回数減少型は大腸通過遅延型もしくは大腸通過正常型、排便困難型は大腸通過正常型もしくは機能性便排出障害に分類されます。

慢性便秘(症)の分類

原因
分類
症状
分類
分類・診断のため
の検査方法
専門的検査に
よる病態分類
原因となる病態・疾患
機能性 排便回数
減少型
大腸通過時間検査
など
大腸通過遅延型 特発性
症候性:代謝・内分泌疾患,神経・筋疾患,膠原病,便秘型過敏性腸症候群など
薬剤性:向精神薬,抗コリン薬,オピオイド系薬など
大腸通過正常型 経口摂取不足(食物繊維摂取不足を含む)
大腸通過時間検査での偽陰性 など
排便
困難型
大腸通過時間検査,
排便造影検査など
硬便による排便困難・残便感
(便秘型過敏性腸症候群など)
排便造影検査など 機能性便排出障害 骨盤底筋協調運動障害
腹圧(怒責力)低下
直腸感覚低下
直腸収縮力低下 など

腸内環境は心にも
影響を与える

便秘によって腸内環境が乱れると、心にも影響を与える可能性があります。脳と腸は、自律神経系や内分泌系などを介して双方向に情報交換を行っており、この密接な関係は「脳腸相関」と呼ばれます。

過敏性腸症候群のように、ストレスが原因で便秘や下痢が引き起こされるだけでなく、腸の不調が脳へストレス信号として伝わり、気分の落ち込みや不安感につながるという悪循環も指摘されています。

また、精神の安定に深く関わる神経伝達物質セロトニンの生成プロセスには腸内細菌が関与していることがわかっています。うつ病の方とそうでない方では腸内フローラのバランスに違いがあるという研究報告もあり、腸と心の関係は医学的にも注目されています。

なお、うつ病や統合失調症などの治療薬を服用している場合にも、便秘が生じることがありますが、これは主に薬の作用によって腸のぜん動運動が抑制されるためです。

便秘と関係のある病気

痔や腸閉塞は便秘によってリスクが高まる可能性のある病気です。

便秘によって便が硬くなると、便が出にくくなるため、トイレで強くいきむことが増えます。硬い便が肛門を傷つけてしまったり、いきむことで肛門の血管に圧力がかかりすぎたりすることで、いぼ痔や切れ痔を悪化させてしまうことがあります。

慢性的な便秘は腸閉塞の原因となることがあります。腸閉塞の初期症状と便秘の症状は似ているため、便が出にくい症状に加え、嘔吐や発熱などが見られる場合は早めに病院で検査を受けるようにしましょう。

また、普段は便秘ではないのに急に便秘の症状が見られた場合には、大腸がんの進行などによって腫瘍が排便の邪魔をしている可能性もあります。何をしても便秘が改善しなかったり、激しい腹痛が長引いたり、といった場合は、こちらも早めに医療機関での検査をおすすめします。

食生活に
取り入れられる
便秘の対処法

ストレスや生活習慣、筋力の低下や極端なダイエットによる食事量の減少、加齢などの要因で便秘は起こりやすくなります。まずは規則正しい生活や十分な睡眠、バランスの取れた食事を意識しましょう。

特に、朝食はできるだけ食べるようにしましょう。食べ物が胃に入るとその刺激で大腸が大きく動く「胃結腸反射」は朝食後に最も強く起こるため、朝食をしっかり食べることによって、生活リズムが整うだけでなく胃腸の動きが促され、排便されやすくなります。
朝食を抜くことは排便の機会を逃すことになるため、もし食欲がなくて固形物を食べるのが難しい場合には、水を一杯飲むだけでも胃への刺激になります。

食生活においては、腸内環境を整えるために、乳酸菌や食物繊維を含む食品を積極的に取り入れましょう。食物繊維には、海藻や果物に含まれる水溶性食物繊維と、野菜やきのこ、豆類に含まれる不溶性食物繊維があります。
水溶性食物繊維には便を柔らかくする効果があり、不溶性食物繊維には便のかさを増やす効果があるのですが、便が詰まって苦しい状態の時に不溶性食物繊維を摂ると、便のかさが増えることで、かえって排出されづらくなる可能性があります。
特に開腹手術をされた方は、不溶性食物繊維の摂取については主治医に相談すると良いでしょう。

水分が不足すると便がカチカチに硬くなってしまうため、水分補給も重要です。水選びに迷ったら、カルシウムやマグネシウムを多く含む「硬水」を選んでみるのも良いでしょう。マグネシウムには、腸管内の浸透圧を高めることで水分を保持し、便を柔らかくする効果があります。ただし、腎臓に持病がある方はマグネシウムを排出する力が低下していることがあるため、医師に相談してから取り入れるようにしてください。

また、ダイエットによって油を控えすぎていることが便秘につながる場合もあります。植物や魚に含まれる不飽和脂肪酸は腸内の良い菌を増やすだけでなく、便の滑りを良くする潤滑油のような役割を果たしてくれます。オリーブオイルや亜麻仁油などを適度に摂取するようにしましょう。

マッサージと運動で
排便を促しやすく

おへそを中心に「の」の字を書くように行うマッサージを行ったり、手の親指と人差し指の付け根の骨が交わる場所にある手の甲側のツボ「合谷」を刺激したり、仰向けになって両膝を抱えるポーズや、ウォーキングやヨガなどの運動も、腸を刺激して排便を促しやすくする手軽な方法です。
腹筋の力が弱まると、便を押し出す力が不足してしまうため、運動の際には通常の腹筋運動や、ウォーキングの際に太ももを上げる動きを追加するなどして、腹筋を鍛えることも意識してみてください。

また、トイレでいきんでも出ない時は、姿勢を変えてみましょう。洋式トイレに背筋を伸ばして座ると、直腸と肛門の角度が狭くなってしまい、便が出にくい状態になってしまいます。ロダンの「考える人」のような前傾ポーズをとったり、足台を使って膝を腰より高くしたりすることで、無理にいきまなくても便が排出されやすくなります。

便秘の治療法

便秘の悩みを医療機関に相談したい場合には、消化器内科で診療を受けるのが一般的ですが、最近は便秘外来を設けているクリニックもあるため、そういった医療機関を探してみても良いでしょう。ただし、保険適応外の治療法や製品の一部ではエビデンスが明確ではないケースがありますので、よく注意して利用するようにしましょう。

一般的に、便秘の治療は生活習慣の改善や食事療法から始まり、効果が見られない場合は薬物治療が検討されます。内服薬のほか、坐薬や浣腸なども用いられます。このような治療で改善しない場合は外科治療が行われることもありますが、これはかなり稀なケースです。

市販の便秘薬を使用する際には注意が必要です。大腸を直接刺激するセンナなどの刺激性下剤は、即効性はあるものの、安易に使い続けると腸が刺激に慣れてしまって、耐性がついてしまう可能性があります。医師の処方する便秘薬は新たなものが開発され、副作用も少なく依存性もないものが利用可能となっています。自己判断で市販薬を乱用することなく、医師の指示のもとで自分に合った薬を選ぶことが大切です。