健康管理の
下痢・軟便の症状と
対処とは?
下痢や軟便とは、腸で本来吸収されるはずの水分が十分に吸収されずに、通常よりやわらかい便として排出される状態のことです。
ヒトの体は、胃で食べ物を消化した後、小腸で栄養素と水分を吸収し、大腸でさらに水分を吸収して固形の便をつくり、外へ排出していますが、このはたらきが乱れると、便の水分量が多いままとなり、下痢や軟便を引き起こします。
- 監修
- かなまち慈優クリニック 院長/医学博士・総合内科専門医・消化器病専門医 高山哲朗先生
下痢・軟便の原因
下痢や軟便が発生する原因は一つではなく、ウイルスやストレス、薬や体質などさまざまな要因によって起こります。ここでは主な原因を「細菌やウイルス」「冷え・ストレスや薬の影響」「体質や病気」の3つに分けて説明します。
細菌やウイルスによる
下痢・軟便
「細菌やウイルス」が原因の下痢や軟便においては、ノロウイルス、ロタウイルス、腸管アデノウイルスなどのウイルスや、O157などの腸管出血性大腸菌、サルモネラ属菌などの細菌が原因として挙げられます。これらに感染すると、腸の粘膜に炎症が起こり、水分を十分に吸収できなくなってしまいます。結果、下痢や軟便に加えて、腹痛、吐き気、嘔吐、発熱などを伴います。重症化すると血便が見られることもあり、注意が必要です。
これらの細菌やウイルスの多くは、汚染された食品や水を介して体内に入ります。手指や調理器具、食器、ドアノブなどを介した接触によって口から取り込まれることもあります。嘔吐や下痢を伴う感染症では、吐瀉物や便に含まれる病原体が周囲に付着し、十分な処理や手洗いが行われないと、周囲の人に広がってしまう可能性があります。
また、旅行先の水や食事、衛生環境の変化などによって下痢が起こるケースでは、細菌やウイルスに加えて、まれに寄生虫が関与する例も見られます。
冷え・ストレスや薬の
影響による下痢・軟便
感染症以外にも、下痢や軟便は体調や生活環境の影響で起こることがあります。腹部の冷えや強いストレスは腸の動きを乱しやすく、下痢や軟便を引き起こすことがあります。
また、抗生物質などの薬の副作用として下痢が起こる場合もあります。これは、薬が腸内細菌のバランスに影響して、腸のはたらきが一時的に乱れるためと考えられています。
体質や病気による
下痢・軟便
体質によって下痢や軟便となることもあります。例えば、乳糖不耐症の人は乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)が不足しており、十分に消化吸収できないため、乳製品を摂った後におなかがゴロゴロしたり、下痢や軟便が見られたりすることがあります。乳糖不耐症は、成長に伴って自然に起こるラクターゼの減少によるものであるため、症状の出る乳製品の摂取量は人によって異なります。
また、下痢や軟便の症状が長期間続いたり、下痢と便秘を繰り返したりする場合には、過敏性腸症候群や、クローン病・潰瘍性大腸炎といった、腸に炎症が起こる病気が関係している可能性もあります。このような場合は、自己判断せず医療機関での相談が大切です。
乳糖不耐症については、下記の記事に詳しく書かれているので、さらに知りたい場合はこちらをご一読ください。
乳糖不耐性とは?|健康管理ラボ by ヤクルト本社
下痢のさまざまな分類
下痢や軟便は、腸のはたらきの変化によって便の水分量が増えることで起こります。下痢には、大きく分けて下記の4つの分類があります。
腸内への水分の分泌が増える「分泌性下痢」は、細菌感染やホルモン異常などが原因となる下痢です。
腸の中と外には浸透圧の差があります。浸透圧とは水分が移動しようとする力の差のことです。腸内に消化・吸収されにくい物質があると腸内の浸透圧が高まり、腸内に水分が分泌され、便の水分量が増えて、「浸透圧性下痢」を引き起こします。
感染や腸の病気などによる腸の粘膜の炎症や損傷により、血液成分や粘液などが腸内にしみ出たり、腸の水分を吸収する機能が低下したりすることで、便の水分量が増えて「滲出性下痢」となります。
また、腸では、ぜん動運動によって消化後の食べ物が肛門側へと運ばれています。この動きがストレスなどの要因で活発になりすぎると、内容物が腸の中を短時間で通過し、水分が十分に吸収されないまま排出される「腸管運動亢進性下痢」となります。
下痢・軟便の対処法
下痢や軟便になった際に、最も注意が必要なのは脱水症状です。下痢や軟便は、腸で本来吸収されるはずの水分が十分に吸収されない状態であるため、水分や電解質が失われやすくなります。こまめな水分補給を心がけましょう。
特に、子どもや高齢者は脱水症状が進みやすい傾向があるため、尿の量が極端に少なかったり、ぐったりしていたりする場合は、速やかに医療機関で医師の診察を受けましょう。
子どもは「のどが渇いた」と言えないことがあり、また高齢者ではのどの渇きを感じない場合もあるため、ともに周囲が注意することが望ましいと言えます。
水分は一度に大量に摂るのではなく、少量ずつ頻繁に摂ることがポイントです。症状が強い場合や、吐き気などで食事を摂ることが難しい場合には、経口補水液の活用も一つの方法です。水分を排出する効果のあるアルコールやカフェインの多い飲み物は避けましょう。
食欲がある場合でも、消化されにくい食物繊維の多い食品や、脂肪分・油分の多い食品、香辛料などの刺激物は控え、スープやおかゆ、うどんなどの消化にやさしい食品を選ぶようにしましょう。症状が落ち着くまでは、胃腸に負担をかけないことが大切です。十分な休養をとり、体調の回復を優先するようにしましょう。
また、腹部の冷えは血流が低下することで消化や吸収のはたらきに影響するため、腹巻きやカイロなどを活用し、おなかを冷やさないようにしましょう。
下痢止めとして販売されている市販薬は、状況に応じて使用することが大切です。ストレス性のものであれば問題ありませんが、下痢止めによって便の排出を抑えることで、ウイルスや細菌などの有害物質を外に出そうとするはたらきを止めてしまい、より体調が悪化してしまう可能性があります。市販薬は一時的に症状を和らげる対処法でしかないため、使用にあたっては用法・用量を守り、症状が改善しない場合は使用を中止し、医療機関に相談することが重要です。
下痢や軟便は、数日以内に自然に治まることもありますが、原因によっては回復までに時間がかかることもあります。数日以上続く下痢や血便などの排便の異常、強い腹痛、発熱を伴ったり、脱水の兆候が見られたりする場合には、大腸がんなどの深刻な病気が隠れている可能性もあるため、速やかに医師の診察を受けるようにしましょう。病院を探す際には診療科の情報を確認し、必要に応じてがんも含めた相談ができる医療機関を選びましょう。
下痢・軟便の予防
下痢や軟便を予防するためには、日頃から腸内環境を整えておくことが大切です。偏った食生活によって腸内フローラが乱れると、下痢や軟便だけでなく、便秘の原因にもなるため、乳酸菌などを含む発酵食品を取り入れ、主食・主菜・副菜をそろえたバランスのよい食生活を心がけましょう。
また、ストレスをためないこと、腹部の冷えを避けることも、腸の調子を保つためには大切です。緊張や疲労が続くと腸の動きが乱れやすくなるため、良質な睡眠を確保しましょう。生活リズムを整え、規則正しい生活を送ることが下痢や軟便の予防につながります。
軽いストレッチやウォーキングなどの無理のない運動は、ストレス解消にもつながり、血行を良くするため、下痢や軟便だけでなく便秘にも効果的です。
感染症や食中毒による
下痢や軟便を
防ぐには?
感染症や食中毒による下痢や軟便を防ぐためには、手洗いの徹底や衛生管理が重要です。調理や食事の前後、外出やトイレの後には石けんで手を洗い、加熱が必要な食品は十分に加熱するなど、基本的な対策をしっかり行いましょう。
手指の衛生対策としてアルコール消毒が用いられることもありますが、病原体の種類によってはアルコールだけでは十分ではないことがあります。例えば、ノロウイルスは一般的なアルコール消毒が効きにくい特徴を持つウイルスです。
ノロウイルス対策には、石けんと流水での手洗いを基本とし、吐瀉物や便で汚れた場所を処理する場合は、次亜塩素酸ナトリウムなどノロウイルスに効果のある方法で消毒を行うようにしましょう。
次亜塩素酸ナトリウム液は、家庭にある塩素系漂白剤を希釈して作ることができます。吐瀉物や便の処理用には約0.1%濃度の希釈液、調理器具やトイレのドアノブ、便座、衣類などの消毒には約0.02%濃度の希釈液を使用することが推奨されています。
作り方は下図の通りですが、作る際には必ず換気を行いましょう。次亜塩素酸ナトリウム消毒液は金属が腐食する可能性もあるため、拭き終わった後はしっかり水拭きをしましょう。