栄養の

グルテンフリーとは?

食生活栄養健康法グルテンフリー

近年注目を集める「グルテンフリー」は、小麦などに含まれるグルテンを避けることで症状を改善するセリアック病の治療法が原点です。一般的な健康法として取り入れる場合は栄養バランスに注意する必要があります。

そもそも
グルテンとは?

小麦粉に含まれるたんぱく質の主成分は「グルテニン」と「グリアジン」ですが、水を加えてこねると、2つのたんぱく質が絡み合って弾力と粘り気を持つ「グルテン」となります。パンやうどんなどがもちもちとした食感になるのは、グルテンの特性によるものです。

グルテンには伸縮性があり、発酵したパン生地のガスを袋のように閉じ込めて、パンが膨らむのを助けます。グルテンのおかげで焼き上がったパンはふんわりとした食感になります。

うどんやパスタなどの麺類も、グルテンの弾力性によってコシのある食感が生まれます。麺類の場合は茹でることでグルテンの弾力性が固定され、茹でた後にもコシが維持されるという効果があります。

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グルテンフリーとは

グルテンフリーとは、グルテンを含まない食品や食事法のことを言います。もともとは、グルテン摂取が原因で起こる遺伝性の病気「セリアック病」や小麦アレルギーを持つ方々向けの食事療法です。

ちなみに、「グルテニン」と「グリアジン」からグルテンが作られるのは小麦粉だけですが、ライ麦や大麦にはグルテンと似た「セカリン」や「ホルデイン」というたんぱく質が含まれています。これらのたんぱく質もセリアック病や小麦アレルギーの方々に同様の健康問題を引き起こす可能性があるため、グルテンとして扱われることがあります。

セリアック病と
小麦アレルギー

セリアック病とは、グルテンへの免疫反応が原因となる遺伝性の病気です。グルテンを摂取すると特定の抗体が作られ、腸の粘膜に炎症が起こり、栄養素が吸収できなくなるという症状が現れます。欧米では、セリアック病にかかっている人は全人口の約1%ほどですが、日本ではそれよりも少なく、0.05%程度だと言われています。

小麦アレルギーは小麦製品を摂取することで起きる食物アレルギーの一種であり、下痢やじんましん、呼吸困難などを引き起こします。

小麦を摂取するだけではアレルギーが起きないのに、小麦を摂取した後に運動することで発症する小麦依存性運動誘発アナフィラキシーという特殊な小麦アレルギーも存在します。

セリアック病はグルテンを含む食品を避けることで症状が改善しますが、小麦アレルギーの場合は、グルテンフリーの食品でも小麦アレルギーを引き起こす可能性があるため、グルテンだけでなく、小麦そのものが含まれていない食品を選ぶ必要があります。

グルテン不耐症に
ついては
まだ
わからないことが多い

セリアック病でも小麦アレルギーでもない人がグルテンを摂ることで腹痛や膨満感、倦怠感などを引き起こすことがあり、それをグルテン不耐症と呼ぶことがあります。

グルテン不耐症は検査方法や診断基準もまだ確立されていないため、まだわからないことが多いですが、グルテン不耐症と思われる方がグルテンフリーの食生活を続けた結果、体調が良くなったという声は少なくないようです。

これはグルテン不耐症の症状改善によるものかもしれませんが、グルテンに気を配ることで食生活全体を見直した結果、栄養バランスが整って体調が改善した可能性や、「体に良いことをしている」という意識から生まれるプラセボ効果も考えられます。

グルテン摂取によって体調に違和感を感じたら自己判断はせず、医師に相談してみましょう。

グルテンフリーの
メリットとは?

グルテンフリーはセリアック病、小麦アレルギーを持つ方の症状を改善するという明確なメリットがあります。しかし、それ以外の人へのメリットについてはわかっていません。過敏性腸症候群(IBS) の症状が軽減する可能性もありますが、多くは部分的な改善となるようです。

また、グルテン以外のたんぱく質に反応する小麦アレルギーの場合は、グルテンフリーが必ずしも症状の改善につながらない可能性もあります。

グルテンフリー食品には
どんなものがあるの?

グルテンを含む食品には小麦粉を使ったバンやピザ、パスタ、ケーキや焼き菓子、ワンタン、餃子などがありますが、一見それとはわからない、醤油やドレッシングなどにも小麦粉が使われていることがあります。

肉や魚、野菜や果物にはグルテンは含まれていないので、グルテンフリーを実践する場合はこれらの食材を中心に据え、主食や加工食品に小麦・大麦・ライ麦を含まないものを選ぶことがポイントです。

グルテンフリーの代表的な主食には米や米粉製品、そば粉100%の十割そばや、きびやキヌアなどの雑穀があります。じゃがいもやさつまいも、タピオカなどのでんぷん質の食品もグルテンフリーです。

近年は、小麦粉の代わりに米粉を使った麺やケーキ、焼き菓子などが増えてきて、以前に比べて手に入れやすくなっています。

グルテンフリー食品

グルテンフリーの
ダイエット効果

グルテンフリーはダイエット法として注目されることもありますが、実は科学的にダイエット効果が証明されているわけではありません。

小麦が含まれるパンやパスタ、ケーキや焼き菓子などの摂取を控えることで摂取カロリーが減り、それが体重減少につながる可能性はありますが、グルテンフリーをうたう食品の中には小麦粉製品より高カロリーなものもあります。

また、グルテンフリーはグルテンを含む食品を避けるため、小麦に含まれる食物繊維やビタミンB、ミネラルが不足する可能性があります。足りない栄養素は他の食品で補いましょう。

日本と世界の
グルテンに関する基準

欧米では日本よりもセリアック病患者が多く、年々増え続けています。グルテンフリー商品市場も拡大しているため、各国それぞれがグルテンフリーの基準値を設定しています。

アメリカでは米国食品医薬局(FDA)はラベル表示に「グルテンフリー」とある食品に含まれるグルテンを20ppm未満(1kgあたり20mg未満)と定めていますが、非営利団体のグルテンフリー認証組織(The Gluten-Free Certification Organization、 GFCO)はグルテンの含有量を10ppm以下と定めており、FDAよりも厳しい基準としています。

EUでは「グルテンフリー(gluten free)」と表示できるのは、最終消費者への販売時における食品中のグルテン含有量が20mg/kg未満と定めており、100mg/kg未満の場合は「超低グルテン(very low gluten)」と表示する必要があります。

日本におけるグルテンフリーの基準は明確な基準はありませんが、米粉製品については2020年に製造工程を管理する規格「ノングルテン米粉の製造工程管理JAS(JAS0014)」が制定されました。グルテン含有量が1ppm以下の米粉にノングルテンの認証マークがつきます。
米粉にはグルテンは含まれていませんが、この認証は、グルテンの外部からの混入を厳しく管理することで米粉の信頼性を向上させ、米粉の普及や輸出拡大に貢献するものです。