
栄養の
コラーゲンとヒアルロン酸の違いとは?
化粧品や食品などで見かけることも多く、健康や美容効果が注目されるコラーゲンとヒアルロン酸は私たちの体にもともと存在する成分ですが、年齢とともに減少していきます。
かつては直接摂取しても「意味がない」と言われていましたが、現在はコラーゲンについては経口摂取によってさまざまな効果があることがわかっています。
- 監修
- 赤須医院院長/医学博士・日本皮膚科学会専門医 赤須玲子 先生
コラーゲンと
ヒアルロン酸って
どんなもの?
コラーゲンはたんぱく質の一種で、皮膚や血管、骨や歯などさまざまな組織の中に存在しています。三つ編みのような「三重らせん」の構造を持ち、高い強度と柔軟性が特徴です。ヒトの体を構成するたんぱく質の30%ほどを占めており、組織や細胞をつなぎ合わせる役割を持っています。コラーゲンの種類は多く、20種類以上あると言われており、皮膚や骨、腱に存在するⅠ型、軟骨や眼球の硝子体に存在するⅡ型などがあります。
ヒアルロン酸は細胞と細胞の間にあるゼリーのような物質で、「ムコ多糖類」という糖質の一種です。非常に高い保水力を持っていて、1gで6ℓの水を保持できるとされています。目や皮膚、軟骨などに存在していて、目の乾燥を防いだり、肌のうるおいを保ったり、関節の動きをスムーズにしたりする役割があります。
皮膚の奥にある真皮層ではコラーゲンが網目状となって肌の土台を作り、ヒアルロン酸がその隙間を埋めてたくさんの水分をため込むことで肌にハリと弾力を与えています。また、関節ではコラーゲンが軟骨の主成分となり、ヒアルロン酸は軟骨内の水分保持に加えて潤滑油としてはたらいており、体のさまざまな場所でコラーゲンとヒアルロン酸は協力し合っています。
コラーゲンもヒアルロン酸も、体内で作られる量は加齢とともに減少していきます。コラーゲンが減ると皮膚のハリがなくなり、ヒアルロン酸が減ると肌が乾燥し、しわができやすくなります。

加齢によるコラーゲン減少

加齢によるヒアルロン酸の減少

- Tadao Miyahara, et al. Age-related Differences in Human Skin Collagen: Solubility in Solvent, Susceptibility to Pepsin Digestion, and the Spectrum of the Solubilized Polymeric Collagen Molecules G. Journal of Gerontology, 37, 1982, 651-655. (一部改変)
- M O Longas, et al. Evidence for structural changes in dermatan sulfate and hyaluronic acid with aging. Carbohydr Res. 1987, 159,127-136. (一部改変)
体内でつくられる
しくみ
コラーゲンは線維芽細胞という細胞によりアミノ酸とビタミンC、鉄分を材料として作られます。線維芽細胞は真皮層や肺、肝臓や骨、血管など全身のさまざまな場所に存在している細胞で、コラーゲン以外にもヒアルロン酸や、肌の弾力を保つ繊維状のたんぱく質であるエラスチンなどを生成します。
線維芽細胞内にあるリボソームという器官がコラーゲンの材料となるアミノ酸をつなげて鎖状のコラーゲンが生成されます。その際、鎖をより丈夫にする道具としてビタミンCと鉄分が使われます。
ヒアルロン酸は、コラーゲンを作り出す線維芽細胞や、表皮の角化細胞で、糖を原料として作られます。細胞の表面にあるヒアルロン酸合成酵素が、血液から取り込んだ糖を細胞内で2種類の材料に加工し、それらを交互につなげて長い鎖状のヒアルロン酸を作ります。

塗ったり
注射したりしても
効果はある?
コラーゲンやヒアルロン酸を含む化粧水や美容液は、肌の表面をうるおわせる保湿効果が期待できます。
美容医療で使われるコラーゲンやヒアルロン酸注射は肌に直接注入することでシワなどの改善を行うものですが、どちらも時間が経てば分解・吸収されて治療前の状態に戻ります。コラーゲン注射はヒアルロン酸注射よりもアレルギーなどの副作用のリスクが高いため、事前にアレルギー反応のテストが必要です。
化粧品なら保湿効果、注射なら一時的なシワやたるみの改善といった効果があるため、目的や予算に応じて適切な方法を選ぶことが重要です。
口から摂取しても
意味があるの?
コラーゲンはうなぎや牛すじ、鳥の手羽先、フカヒレなどに含まれており、ゼリーの材料となるゼラチンもコラーゲンです。また、コラーゲンが含まれる食べ物の多くにはヒアルロン酸も含まれています。
かつては、コラーゲンやヒアルロン酸を食べ物やサプリメントなどで直接摂取しても、胃で分解されるだけで意味がないと考えられていましたが、摂取することでさまざまな効果があることがわかってきました。
コラーゲンは胃でアミノ酸に分解されますが、そのアミノ酸がコラーゲンを作る原料となります。また、さまざまな研究によって、コラーゲンを低分子化して吸収しやすくしたコラーゲンペプチドを摂取すると線維芽細胞を活性化することや、リハビリと併用してコラーゲンペプチドを摂取すると骨格筋量が増加することもわかっています。
ヒアルロン酸は、科学的根拠に基づいて機能性を表示できる食品「機能性表示食品」に配合されていることも多く、肌の水分保持と乾燥の緩和する機能があることがわかっています。また、さまざまな研究の中で、摂取されたヒアルロン酸が胃で分解された後に、体内でヒアルロン酸を作る材料にはなるのではないかとも考えられています。