からだの
アドレナリンとは?
スポーツに熱中する際などに「アドレナリンが出る」と表現することがあります。テンションが上がる、興奮する、といった意味合いで使われることもあるようですが、アドレナリンは本来、体の防御反応として分泌されて機能する物質です。身体機能を高める効果だけでなく、過剰分泌によって体に悪影響を与えることもあります。
- 監修
- 糖尿病専門医・救急科専門医・総合内科専門医・抗加齢医学専門医 福井美典 先生
アドレナリンとは
ホルモンの一種であるアドレナリンは主に副腎の内部にある副腎髄質でつくられており、危険やストレスを感じた時と興奮時に分泌されます。
本来は、戦うもしくは逃げることが必要な危機に対して機能するホルモンであり、アドレナリンが分泌されると、心拍数や血圧の上昇、気管支の拡張のほか、肝臓にはたらきかけて血糖値が上昇します。これにより筋肉や脳に素早くエネルギーが供給され、集中力や注意力などの身体機能が一時的に高まります。また、アドレナリンには痛みや疲れを感じにくくする作用もあります。
アドレナリンが分泌されると口が渇くことがありますが、これは、目の前にある危機やストレスに対して優先すべき機能に対してエネルギーを使うため、唾液分泌を含む消化機能は後まわしにされるからです。
また、アドレナリンには緊急時にトイレに行きたくなってしまうことを避けるため、膀胱を広げて溜められる尿の量を増やす作用もあります。
ノルアドレナリンと
アドレナリンの違い
副腎髄質は、交感神経系と密接に連携してはたらき、危険やストレスを感じた際にアドレナリンやノルアドレナリンを血液中に放出します。
ノルアドレナリンはストレス反応時に副腎髄質から分泌されるホルモンで、アドレナリンのもととなる物質であるため、似た構造を持っていますがそれぞれのはたらきは全く異なります。
アドレナリンは心拍数の増加や気管支の拡張など、ノルアドレナリンよりも幅広い作用を持っています。どちらにも血圧上昇作用がありますが、アドレナリンが心臓のポンプ機能を強化して血圧を上げるのに対し、ノルアドレナリンは血管を収縮させることで血圧を上昇させます。
ノルアドレナリンには交感神経の情報伝達物質や、脳内の神経伝達物質としても重要な役割があり、これもアドレナリンとの大きな違いの一つです。脳内のノルアドレナリンには集中力ややる気を高める役割があり、ノルアドレナリンのはたらきが低下すると意欲や気力が低下してしまいます。
ドーパミンと
アドレナリンの違い
ドーパミンは脳や脊髄といった中枢神経系に存在します。「ドパミン」と表記することもあります。やる気を出したり、何かを学んだり、体を動かしたりする時に重要な役割を果たします。「幸せホルモン」と呼ばれることもあるように、ホルモンのようにもふるまう神経伝達物質です。
一方、アドレナリンは副腎髄質から分泌されるホルモンで、体を緊急事態に対応させる役割を持ちます。
実は、これらの物質は体内で段階的につくられる関係にあります。チロシンという物質からドーパミンがつくられ、それがノルアドレナリンに変化し、ノルアドレナリンからアドレナリンがつくられます。
アドレナリンの悪影響
アドレナリンは一時的に身体機能を高めてピンチを脱するためのホルモンで、短期的な危機対応には欠かせない存在です。しかし、ストレスや危機的な状況が長期間に及ぶと、アドレナリンが過剰に分泌される状態も長く続くことになり、心臓や血管に負担を与えてしまいます。
睡眠不足と
アドレナリンの関係が
虫歯にも影響する?
実は、睡眠不足はアドレナリンとも深い関係があります。睡眠が不足すると、十分に休むことができない体はエネルギーが必要だと判断し、交感神経系を活性化させ、アドレナリンが持続的に分泌されます。アドレナリンの過剰分泌は免疫系のはたらきを抑えるため、免疫機能のバランスが崩れてしまう可能性があります。
また、アドレナリンが虫歯に関係することは意外と知られていません。アドレナリンには唾液の分泌を抑制する作用があるため、アドレナリンが分泌されると口の中が乾燥しやすくなります。唾液は口内の細菌の増殖を抑えるはたらきがありますから、唾液が減少することで虫歯や歯周病のリスクが高まります。
睡眠不足はアドレナリンの分泌を促し、さまざまな不調を引き起こすため、質の良い睡眠を十分にとることが重要です。