からだの
高血圧・低血圧
とは?
血圧とは、心臓から血液が送り出される際に血管の内壁にかかる圧力のことです。心臓から血液が送り出されることで血液が全身を循環し、酸素や栄養を体中の細胞に届けることができます。血圧は1日の中でも変動しており、朝は次第に上昇し、活動量が増える昼間は高く、夜は低くなる傾向があります。
また、季節によって違いがあり、一般的に夏よりも冬の方が血圧は上がりやすくなります。血圧が高すぎると血管に負担がかかり、心血管疾患などのリスクが上昇するため、適切な範囲に保つことが重要です。
- 監修
- かなまち慈優クリニック 院長/医学博士・総合内科専門医・消化器病専門医 高山哲朗先生
体は血圧を
どのように
コントロール
しているのか
私たちの体は、心臓から送り出す血液の量、動脈の太さ、血液中の水分量などを調節することで血圧をコントロールしています。
運動で体を動かしたり、スポーツ観戦などで興奮したりすると交感神経がはたらき、アドレナリンやノルアドレナリンといったホルモンが分泌されます。これらのホルモンによって心拍数が上がったり、細動脈が伸縮・拡張を繰り返したりします。また、交感神経の影響で腎臓が刺激されると排泄が抑えられ、血液の水分量が上がります。
血圧を上げる必要がある場合には、心拍数を上げて心臓から送り出す血液の量を増やしたり、動脈を収縮させたり、血液中の水分量を上げたりすることで血圧を調整します。
逆に、血圧を下げる必要がある場合には心臓から送り出す血液の量を減らすために、心拍数を抑えたり、動脈を広げたり、血液中の水分量を下げたりして調整しています。
血圧の
「上」「下」って何?
血圧を測ると、2つの数値が出てきます。よく「上が120、下が82」というように上下で表現します。
心臓は血液を全身に届けるポンプの役割を持ち、常に収縮と拡張を繰り返しています。「上」と呼ばれる血圧は心臓が収縮している時の最高値で「収縮期血圧」と言います。「下」と呼ばれる血圧は心臓が拡張している時の最低値で「拡張期血圧」と言います。
心臓が収縮している時は血管にかかる圧力が強くなり、拡張している時は逆に弱くなるため、「収縮期血圧」の方が「拡張期血圧」よりも高くなります。
診察室血圧と
家庭血圧
医療機関で測定する血圧を「診察室血圧」、家庭で測定する血圧を「家庭血圧」と言います。
近年、市販の血圧計が普及し、家庭で気軽に測定できるようになったため、その数値を診療の参考にすることも一般的となりました。血圧は常に一定ではなく、診察室血圧と家庭血圧が異なる値となることがあります。病院では緊張して普段より高い値が出ることもあるため、両者に差がある場合は家庭血圧が優先されます。
正常血圧の目安は、診察室血圧では収縮期120mmHg未満かつ拡張期80mmHg未満、家庭血圧では収縮期115mmHg未満かつ拡張期75mmHg未満とされています。
高血圧の診断基準は、診察室血圧では収縮期140mmHg以上または拡張期90mmHg以上、家庭血圧では収縮期135mmHg以上または拡張期85mmHg以上、もしくは両方を満たす場合です。
日本高血圧学会では血圧値を下記のように分類しています。
血圧値の分類(成人血圧,単位はmmHg)
| 分類 | 診察室血圧 | 家庭血圧 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 収縮期血圧 | 拡張期血圧 | 収縮期血圧 | 拡張期血圧 | |||
| 正常血圧 | <120 | かつ | <80 | <115 | かつ | <75 |
| 正常高値血圧 | 120-129 | かつ | <80 | 115-124 | かつ | <75 |
| 高値血圧 | 130-139 | かつ/または | 80-89 | 125-134 | かつ/または | 75-84 |
| Ⅰ度高血圧 | 140-159 | かつ/または | 90-99 | 135-144 | かつ/または | 85-89 |
| Ⅱ度高血圧 | 160-179 | かつ/または | 100-109 | 145-159 | かつ/または | 90-99 |
| Ⅲ度高血圧 | ≧180 | かつ/または | ≧110 | ≧160 | かつ/または | ≧100 |
| (孤立性) 収縮期高血圧 |
≧140 | かつ | <90 | ≧135 | かつ | <85 |
高血圧の診断基準は定期的に見直されていますが、現行のガイドラインにおいては診断基準そのものに大きな変更はない一方で、治療における目標血圧は以前より厳格化されています。
一般には収縮期血圧130mmHg未満、拡張期血圧80mmHg未満が目標とされ、年齢や合併症の有無など個々の状態に応じて調整されます。
高血圧と高血圧症
血圧が高い状態を「高血圧」と言いますが、血圧が高い状態が慢性的に続くことを「高血圧症」と呼びます。高血圧の状態が長く続くとさまざまな病気や合併症を引き起こすリスクが高まりますが、自覚症状はほとんどありません。そのため、高血圧は「サイレントキラー(静かなる殺人者)」とも呼ばれています。
高血圧症には、「本態性高血圧症」と「二次性高血圧症」があります。
高血圧は遺伝要因と生活習慣要因が複合して起こるため、明らかな原因を特定できない「本態性高血圧症」が高血圧症と診断される方の9割を占めます。「二次性高血圧症」は甲状腺や副腎、睡眠時無呼吸症候群が原因となって起こる高血圧症です。
血圧が高くなる
主な原因
血圧が高くなる原因には、塩分の摂りすぎ、ストレス、運動不足、過度な飲酒、喫煙などの生活習慣に加え、加齢に伴う血管の弾力性の低下など、さまざまな要因が複合的に関わっています。
中でも、日本では“塩分の摂取量の多さ”が大きな要因として指摘されています。塩分を摂りすぎると、血液中のナトリウム濃度が上昇し、それを調整するために体が水分をためこもうとします。体内の水分が血管内に引き寄せられ、血液量が増えることで血圧が上がります。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」によると、食塩摂取量の一日あたりの目標は成人男性7.5g未満、成人女性6.5g未満とされています。また、高血圧で治療している人は、一日6.0g未満にすることが推奨されています。これは国際的に見ると高い数値であり、WHOの一般成人向けのガイドラインにおいては、一般成人の食塩摂取量の一日あたりの目標は5g未満と設定されています。
厚生労働省の「令和5年 国民健康・栄養調査」によると、日本人の平均塩分摂取量は9.8gであり、20歳以上の男性では10.7g、20歳以上の女性では9.1gとなっています。日本の食文化には塩分を含む食品が多く、日本人の食塩摂取量は世界基準で見るとかなり多い方であるため、日常的に食事の塩分量を意識することが重要です。
血圧が
高くなることで
起こる健康の問題
血管の壁はもともと収縮や拡張が可能な弾力性を持っていますが、血圧が高い状態が続くと、常に圧力をかけられているため、どんどん厚く硬くなっていき、動脈硬化を引き起こす要因となります。高血圧による動脈硬化は太い血管にも細い血管にも起こるため、脳卒中や心筋梗塞、腎臓病などのリスクが高まります。
また、糖尿病と高血圧は合併しやすい病気です。高血圧ではない人に比べると、高血圧の人が糖尿病になる確率は2〜3倍と高く、両方が合併すると、腎臓病や網膜症が悪化する可能性が高まります。
このようなリスクを早期に把握して予防や治療を行うためには、定期的に医療機関で検査を受けることが大切です。
低血圧の問題
高血圧だけでなく低血圧も体の不調を招く要因となるため、注意が必要です。低血圧が慢性的に続く低血圧症は「本態性低血圧症」「起立性低血圧症」「症候性低血圧症」の3つに分類されます。うち、「本態性低血圧症」は本態性高血圧症と同じく、はっきりした原因が特定できない低血圧症であり、低血圧症の約9割を占めます。
「起立性低血圧症」は体を起こしたり、立ち上がったりする際に血圧が急激に下がり、立ちくらみやめまいが起きる低血圧症であり、普段は低血圧ではない人にも見られます。
「症候性低血圧症」は心筋梗塞や心不全などの心疾患、熱中症や脱水などの血液量低下によって引き起こされる低血圧症の一種ですが、薬の副作用によって起こることもあります。
低血圧も遺伝要因と生活習慣要因が複合して起こる症状ですが、遺伝的に心臓の血液を送り出す力が弱い方や、痩せ型、虚弱体質、若い女性に多い傾向があります。また、自律神経の乱れや、睡眠不足、運動不足なども要因とされています。
健康的な血圧を
維持するために
血圧は高すぎても低すぎても体に負担をかけるため、適正な範囲に保つことが重要です。食事では塩分を控え、カリウムを多く含む野菜(ブロッコリー、ほうれん草など)や果物(アボカド、バナナ、キウイなど)を意識して摂りましょう。カリウムには体内の余分なナトリウムを排出しやすくするはたらきがあります。ただし、腎臓病のある方はカリウムの摂取に制限が必要な場合があるため、主治医と相談してください。
自律神経の乱れが高血圧や低血圧につながることもあるため、生活リズムを整えることや、適度な運動、ストレス管理、十分な睡眠も重要です。
また、喫煙は血管を収縮させ、過度な飲酒は血圧を上げる要因となるため、禁煙や節度ある飲酒を心がけることも大切です。