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血糖とは?

食生活対策生活習慣病血糖循環器

血糖とは血液に含まれるブドウ糖(グルコース)のことです。細胞にとって重要なエネルギーで、特に脳は血糖をほぼ唯一のエネルギー源としています。血糖が極端に不足すると、脳のエネルギーが足りなくなり、意識障害などを引き起こす可能性もあります。

血液中のブドウ糖濃度を血糖値と言います。健康な人でも、食事や活動量、ストレスなどの影響で血糖値は一日のうちに上下します。血糖値は高すぎても低すぎても体に悪い影響を及ぼすため、その変化が必要以上に大きくならないよう、体内で細かく調節されています。

監修
かなまち慈優クリニック 院長/医学博士・総合内科専門医・消化器病専門医 高山哲朗先生

血糖値の変化と
一定に保つしくみ

食事をすると、炭水化物は消化されてブドウ糖(グルコース)となり、腸から吸収されて肝臓を経由し、血液の中に入ります。食後に血糖値が上がるのはこのためです。

血糖値が高くなると、すい臓からホルモンの一種であるインスリンが分泌されます。インスリンの助けによってブドウ糖は細胞内に取り込まれ、エネルギーとして利用されたり、グリコーゲンという貯蔵用の糖質となって蓄えられたりします。このしくみによって血糖値は一定範囲に保たれるのです。インスリンが十分にはたらかないと、ブドウ糖が細胞に取り込まれず、高血糖の状態が続きやすくなります。

また、摂りすぎて余った糖は肝臓で脂肪酸へとつくり替えられます。これが中性脂肪として蓄積され、体脂肪となって肥満の原因となります。

「血糖値の変化と一定に保つしくみ」図解

正常な血糖値は?

「血糖値は食事の影響を受けないタイミングや指標で測る必要がある」図解

血糖値は血液検査によって測ることができます。ただし、血糖値は食事によって変動するため、血糖値が高い/低いを判断するためには、食事の影響を受けないタイミングや指標で測る必要があります。そのため、10時間以上食事をしていない状態で測る空腹時血糖値や、過去1〜2か月の平均的な血糖値の状態を示すHbA1cの数値を使って判断します。

HbA1cとは、「ヘモグロビンエーワンシー」と読む、血液中の血糖と赤血球中のたんぱく質であるヘモグロビンが結合した「糖化ヘモグロビン」の割合です。血糖値が高いほどヘモグロビンに結合するブドウ糖の量が多くなるため、HbA1cは高くなります。
一度糖化したヘモグロビンは元には戻らず、赤血球が寿命の約120日を終えるまで血液中に残るため、HbA1cは過去1~2ヶ月の平均的な血糖値を示す指標となります。空腹時血糖値だけでは「その時たまたま高かったのか、普段から高いのか」を判別できないため、HbA1cと合わせて判断する必要があります。

空腹時血糖値は70〜99mg/dLが正常値で、HbA1cは5.6%未満が正常値です。

空腹時血糖値が100mg/dL以上126mg/dL未満、またはHbA1cが5.6%以上6.5%未満の場合は糖尿病予備軍であるため、将来糖尿病になるリスクがあります。ただし、この段階で生活習慣を見直すことで、糖尿病の発症を遅らせることや、予防することが可能です。

生活習慣病の予防のため、40歳〜74歳を対象とする特定健診(特定健康診査)では、空腹時血糖値100mg/dL以上を特定保健指導の対象としています。特定保健指導とは、生活習慣病の発症リスクが高い方に対して保健師や管理栄養士などが食事や運動など、生活習慣の改善をサポートしてくれる制度です。

糖尿病とは?

糖尿病とは慢性的に血糖値が高い値を示す病気です。インスリンを作る細胞が壊れてしまい、インスリンがほとんど出なくなることによって引き起こされる1型糖尿病と、インスリンの分泌低下やインスリンの効きが悪くなることで起こる2型糖尿病があります。2型糖尿病の患者数は世界的に増加傾向にあり、日本でも加齢や肥満、運動不足などに伴って患者数が増えています。

糖尿病の診断は、血糖値やHbA1cの値が「糖尿病型」に該当するかどうかで判断されます。糖尿病型とされるのは、空腹時血糖値が126mg/dL以上、随時血糖値が200mg/dL以上、75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値が200mg/dL以上、またはHbA1cが6.5%以上のいずれかを満たす場合です。診断を確定するには、これらの所見が別の日の検査でも確認されることが原則とされています。

糖尿病初期には目立った自覚症状がないことも多く、徐々に口の渇きや尿の量の増加、疲れやすさなどの症状が現れることがあります。自覚症状が乏しいまま進行し、合併症が現れてはじめて糖尿病に気づく人も少なくありません。糖尿病は適切な治療と生活習慣の見直しによって進行を抑えることが重要とされています。

血糖値が高いと
どんな問題が
起こるのか?

血糖値が高い状態が続くと、血管が詰まったり傷ついたりするため、血の流れが滞りやすくなります。放置しておくとさまざまな合併症の原因となります。

糖尿病の合併症は慢性と急性に分けられ、慢性合併症には「細小血管症」と「大血管症」、急性合併症には「糖尿病ケトアシドーシス」と「高浸透圧高血糖症候群」があります。

慢性合併症の「細小血管症」は、細い血管が傷つくことで起こります。手足のしびれなどを引き起こす糖尿病神経障害、目の血管が傷ついて視力に影響する糖尿病網膜症、腎臓のはたらきが低下する糖尿病腎症を引き起こします。これらは糖尿病の三大合併症と呼ばれており、神経の頭文字をとった「し」、網膜=目から「め」、腎臓の頭文字をとった「じ」を、発症する順に並べて、「しめじ」と覚えることが多いようです。

「大血管症」は大動脈など太い血管が動脈硬化を起こすことで心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患、足壊疽などの原因となります。

「糖尿病ケトアシドーシス」も「高浸透圧高血糖症候群」も異常な高血糖をきたし、強い喉の渇きや倦怠感などを引き起こす急性合併症です。糖尿病ケトアシドーシスはインスリンが不足して糖をエネルギーとして利用できなくなるために起こる状態であり、高浸透圧高血糖症候群は高齢者に多く、糖尿病以外の感染症などの病気がきっかけで起きることがあります。いずれも放置すると命に関わることがあるため、早急な治療が必要です。

定期的な検査や適切な治療を行うことで合併症発症のリスクを減らすことができます。体調に異変を感じた場合には速やかに医療機関を受診するようにしましょう。

低血糖の問題

血糖値が高い状態だけではなく、血糖値が低すぎる状態でも手の震えや冷や汗、頭痛、めまいなどの症状が起こります。低血糖は薬物療法を行っている糖尿病患者に多い傾向にありますが、糖尿病でなくても起こり得ます。

血糖値が70mg/dLより低くなると、冷や汗や震えなどの交感神経症状が現れます。体は血糖値を上げるためにグルカゴンやアドレナリンなどのホルモンを分泌し、肝臓から血液中にブドウ糖を放出しようとしますが、それでも低血糖の状態が進み、50mg/dL程度になると、頭痛や目のかすみなど中枢神経症状が現れ、それより低くなると意識を失うなど危険な症状が起きることがあります。

低血糖には、糖尿病の薬を飲んだ後の食事の遅れや、炭水化物や食事量の不足、飲酒や空腹での運動などさまざまな原因があるため、低血糖が疑われる場合には医療機関で診察を受けるようにしましょう。特に治療中の人は、あらかじめ低血糖時の対処法について医療者と確認しておくことが大切です。

適切な血糖値を
維持するために

血糖値は、日々の食事、運動、生活習慣の積み重ねによって改善することができます。食事は糖質に偏らないよう、主食・主菜・副菜のバランスを考えて摂りましょう。ゆっくりよく噛んで食べることや、食物繊維を多く含む野菜や海藻類から先に食べることで、食後の血糖値上昇が穏やかになります。間食や甘い飲み物を控えることも、血糖値の急上昇防止に役立ちます。

血糖をエネルギーとして使う有酸素運動や筋力トレーニングも血糖値を下げるために効果的です。激しい運動は逆効果になることもあり、ややきついと感じる、3METs以上の中等度程度の強度で運動するのが効果的と言われています。運動の頻度は週3〜毎日、週に150分以上が推奨されています。継続することが重要で、運動をやめてしまうと3日ほどで血糖値の改善効果は弱まると考えられます。

睡眠時間や眠りの質が、糖尿病リスクに影響を与えることもわかっています。睡眠時間が5時間以下の人は、7時間超の人に比べて糖尿病リスクが5.4倍となり、睡眠不足感や中途覚醒などの不眠症状がある人は、ない人に比べてそれぞれ6.8倍、5倍も糖尿病リスクが高くなるという研究結果があります。

食事や運動、生活リズムを整えることは、血糖値を安定させ、糖尿病をはじめとした生活習慣病の予防にもつながります。また、糖尿病は初期には症状がないため、定期的な健康診断などで状態を把握しておくとよいでしょう。日々の習慣を無理のない範囲で整え、すこやかな生活を送りましょう。