
からだの
冷え症(冷え性)とは?
寒い季節や、クーラーの効いた部屋で手足が冷たくなることはありませんか?冷え症に悩んでいる人は少なくありません。体質として見過ごされがちな冷え症ですが、放置するとさまざまな不調につながる可能性があるため、注意が必要です。また、冷え症の裏に別の病気が隠れていることもあります。
- 監修
- かなまち慈優クリニック 院長/医学博士・総合内科専門医・消化器病学会専門医 高山哲朗先生
冷え症(冷え性)
とは?
人間の体にはもともと体温を調節する機能が備わっていますが、その調節機能がうまく働かない時に起こる症状のひとつが冷え症です。
冷え症は主に手や足先、腕や太ももなどが温まらず冷えを感じる症状のことで、布団の中にいても足先が冷たくて眠れない、暖かい部屋にいても手先に冷えを感じる、などが例として挙げられます。
冷え症には明確な検査基準はなく、自覚症状によって診断名がつく症状です。
「冷え症」と「冷え性」はどちらも「ひえしょう」と読み、基本的には体が冷えやすい体質や冷えを感じる状態という意味で使われていますが、「冷え症」は冷えから来る症状によって治療が必要な状態を指すこともあります。
冷え症(冷え性)の
原因
冷え症には自律神経の乱れや筋肉量の低下などさまざまな原因があります。
自律神経は体温の調節や血流をコントロールしているため、ストレスや睡眠不足、生活習慣やホルモンバランスによる影響で自律神経が乱れると冷えを感じやすくなります。
厚生労働省の2022(令和4)年国民生活基礎調査によると、手足の冷えが自覚症状としてあると答えた人の割合は女性が男性の2倍以上で、男性よりも女性の方が冷え症になりやすいことがわかっています。女性が男性より冷え症になりやすい理由としては、筋肉量や生理の影響が考えられます。
筋肉は収縮によってエネルギーを消費し、熱を発生させる部位であり、筋肉量が多いほど体温も上がりやすくなります。また、脂肪は熱をとおしにくく、一度冷えると温まりにくい性質を持つため、一般的に男性よりも筋肉量が少なく脂肪量が多い傾向にある女性が冷え症になりやすいのはそのためです。高齢になると筋肉量が減るため、男女共に冷えを感じやすくなります。
女性は生理中、経血によって鉄分が体の外に排出されるため鉄分不足になりやすく、これも冷え症の一因となります。鉄分不足は基礎代謝の低下や、酸素を血管の隅々まで届けるヘモグロビンの減少を招くため、冷え症の原因となります。
その他にも、ニコチンによって血管を急激に収縮させてしまう喫煙も冷え症の原因となることがあります。
冷え症(冷え性)に
よって起こる
体の不調
冷え症によって慢性的な血行障害が起こると、肩こりや頭痛、腰痛、肌荒れや疲れ目、免疫機能の乱れなど、さまざまな不調を引き起こす可能性があります。
また、ただの冷え症だと思っていたら、実は別の病気が原因だった、という場合も。甲状腺機能の低下や、膠原病、貧血、閉塞性動脈硬化症が冷え症の原因となっていることもあるため、冷えを感じるだけでなく指先の色が紫もしくは白色になったり、足が痛くて歩けなかったりといった症状が見られる場合は医療機関を受診しましょう。

冷え症(冷え性)の
対策や改善方法
冷えの改善にはまず、自律神経を整えることが効果的です。睡眠不足やストレス、不規則な生活などは自律神経が乱れる原因となるため、ストレスをためないことや、規則正しい生活、良質な睡眠をとることなどが重要です。朝起きたら太陽の光を浴びる、できるだけ決まった時間に就寝・起床することで質の良い睡眠をとることができます。
入浴やストレッチ、マッサージ、運動などで血行を促進することもおすすめです。入浴はぬるめのお湯にゆっくり浸かることで血行促進だけでなくリラックス効果も得ることができます。ストレッチやマッサージにはいろいろありますが、椅子に座った状態で足首をゆっくりと、一周15秒程度の速さで回すだけでも血行が促進されます。手軽にできる方法なのでぜひやってみてください。
体を締め付けるきつい服装は血行不良の原因となるためなるべく避けましょう。首や手首、足首を温めることで効率的に体全体を温めることができます。

冷えを改善する
食べ物や飲み物は
あるの?
東洋医学の考えでは、体を温める食品と冷やす食品があるとされており、温める食品の例としてはかぼちゃや玉ねぎ、かぶやごぼうなどの根菜類や、しょうがやねぎ、にんにくなどの香味野菜、玄米や小豆などの穀物・豆類が挙げられます。きゅうりやトマトなど夏野菜は体を冷やすため、冷え症の方は摂りすぎないようにしましょう。
栄養素別では、筋肉のもとになるたんぱく質、血管を広げるビタミンB、鉄分の吸収を助けるビタミンC、血行を促進するビタミンEなどを積極的に摂りましょう。
たんぱく質が多く含まれる食品には肉や魚、乳製品などがあります。ビタミンBを多く含む食品には豚肉や卵、レバーなどがあり、ビタミンCは柑橘類やいちご、ブロッコリーなどの果物や緑黄色野菜から摂ることができます。ビタミンEはかぼちゃやほうれん草、ナッツ類に多く含まれています。これらの栄養素は、食品だけでなくサプリメントからも摂ることができます。
冷えは万病のもとと昔から言われています。普段の食事から体を温めることを意識すると、冷え以外の不調も改善していく可能性が高いため、ぜひ取り入れてみてください。