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乳糖不耐症とは?

食生活対策

牛乳を飲むとおなかがゴロゴロする…。そんな症状は、乳糖不耐症によるものかもしれません。赤ちゃんの頃は豊富につくられる分解酵素が大人になるとつくられなくなるのが乳糖不耐症の原因ですが、症状には個人差があります。一般的に、欧米人に比べてアジア人は乳糖を分解する酵素の分泌量が低下しやすく、乳糖不耐症になりやすい傾向があると言われています。

監修
糖尿病専門医・救急科専門医・総合内科専門医・抗加齢医学専門医 福井美典 先生

乳糖不耐症とは?

乳糖不耐症とは、乳糖を分解する酵素が不足し、十分に消化吸収できないために下痢や腹痛などの体調不良を起こす症状です。

乳糖とは糖類の一種でラクトースとも呼ばれ、人間や牛、山羊など哺乳類の乳やそれを原料とする飲食物に含まれています。

乳糖を摂取すると、乳糖を分解する酵素ラクターゼによって乳糖はグルコース(ブドウ糖)とガラクトースに分解され、小腸で吸収されます。小腸内のラクターゼが不足していると、乳糖は小腸でうまく分解できないまま大腸へと進み、ガスの発生や下痢の原因となります。

乳糖を摂取して30分から2時間ほどで下痢や腹痛、腹部膨満感、おならなど、おなかの調子が悪くなる症状が繰り返される場合は乳糖不耐症の可能性があります。

なぜ乳糖をうまく分解
できなくなるの?

人間の母乳にも乳糖は含まれていますが、赤ちゃんが乳糖不耐症を起こすことはほとんどありません。なぜでしょうか?

赤ちゃんは母乳に含まれる乳糖がエネルギーの源であるため、ラクターゼを多く分泌し、消化吸収を助けているからです。ただし、生まれつきラクターゼを生成できない先天性の乳糖不耐症も存在するため、赤ちゃんが必ずしも乳糖不耐症にならないということではありません。

離乳期を過ぎると、母乳以外の食べ物からエネルギーを得ることができるようになるので、ラクターゼは自然に減っていきます。
ラクターゼの減少は成長に伴って自然に起こることなので異常ではありませんが、減少度合いや活性度は人によって大きく異なるため、乳糖を少量摂取しただけで乳糖不耐症の症状を起こす人もいれば、大量に摂取しても症状が出ない人もいます。また、子どもの頃に発症することもあれば、大人になって発症することもあります。

胃腸炎などの病気によって小腸がダメージを受け、ラクターゼのはたらきが一時的に低下して起こる乳糖不耐症もありますが、原因である病気が治ることで改善されます。このような一時的な乳糖不耐症は二次性乳糖不耐症と呼ばれています。

注意が必要な乳製品と
乳糖不耐症が
起こりにくい乳製品

乳糖不耐症が起きやすい乳製品は牛乳だけではありません。牛乳を原料とした生クリームやアイスクリームなどにも注意が必要です。また、意外なところではプロテインにも注意が必要です。ホエイプロテインは牛乳からつくられるため、製品によっては乳糖が含まれています。

ヨーグルトや乳酸菌飲料は発酵によって乳糖が分解されており、乳酸菌が乳糖の消化を助けるため、乳糖不耐症を起こしにくいと言われています。同じく発酵食品のチーズも乳糖不耐症を起こしにくい食べ物の一つです。

また、豆乳やアーモンドミルクなど、乳製品のように扱われる植物性飲料には乳糖は含まれていないため、乳糖不耐症は起こりません。

乳糖を減らした牛乳なども市販されており、牛乳の栄養分を摂りながら乳糖不耐症の症状を避けることができます。

温めた乳製品であれば胃腸への負担も減るため、乳糖不耐症が起こりにくくなります。冷たい乳製品は一気に摂取せず、数回に分けて少量ずつ摂ることも乳糖不耐症対策になります。

乳糖不耐症の検査

医療機関では、問診や便検査、水素呼気試験などで乳糖不耐症を診断します。
水素呼気試験とは、乳糖を摂取した後、20〜30分ごとに呼気を採取し呼気中の水素ガス量を測定する検査で、乳糖不耐症以外の検査にも使われます。
乳糖不耐症を完全に治す方法はありませんが、摂取する乳糖を減らすことで症状軽減につなげることができます。なるべく乳製品を摂らないようにしたり、乳糖を含まない乳製品を選んだり、温めて摂取したりするといった工夫が必要です。

乳製品の摂取を制限するとカルシウムなどの栄養が不足することもあるため、不足しがちな栄養素は他の食品やサプリメントなどで摂取すると良いでしょう。

牛乳アレルギー
との違い

乳糖不耐症と牛乳アレルギーは牛乳で症状が出るという点では似ていますが、乳糖不耐症はラクターゼの不足によって起こり、主におなかの不調が現れるのに対し、牛乳アレルギーは牛乳のたんぱく質に対して免疫システムが過剰に反応することでかゆみや発疹などのアレルギー症状が起こることを指すため、原因が異なります。また、症状も消化器症状については似ている点がありますが、アレルギー症状の場合はじんましんなど異なる症状も見受けられます。これらは当然、対処法も異なります。

アレルギーの場合はヨーグルトやチーズなど、乳糖不耐症が起きにくい食品にも反応し、乳糖不耐症よりも重症化することもあるため、アレルギーが疑われる際には速やかに医療機関を受診してください。