健康管理の
脱水症状を防ぐには?
年中起こる可能性もありますが、夏季には特に気をつけたい脱水症状。症状に気づいてからでは遅いこともあるため、早めの対処が重要です。脱水症状の種類や前触れ、脱水症状の予防方法や、なってしまった時の対処法について理解を深めておきましょう。
- 監修
- 伊藤メディカルクリニック院長/日本循環器専門医・日本外科専門医 伊藤 幹彦先生
脱水症状とは?
脱水とは、水分だけが不足した状態ではなく、体内の水分と、ナトリウムなどの電解質、つまり体液が不足している状態のことです。体液は全身に栄養や酸素を運ぶ、体温を調節するなど、生命維持に欠かせない役割を担っています。脱水によって現れるのどの渇きやめまいなどの体の不調を、脱水症状と言います。
脱水は、失われる水分と電解質のバランスに応じて主に「高張性脱水」「低張性脱水」「等張性脱水」の3種類に分けられ、それぞれ現れる症状も異なります。
- 高張性脱水
水分が電解質より多く失われることで体内のナトリウム濃度が相対的に高くなり、高ナトリウム血症を伴う状態を「高張性脱水」と言います。
汗を大量にかいたときや、水分の摂取量が少ないときに起こりやすく、強いのどの渇きや口の中の乾燥、尿の量が減少するといった症状が特徴です。進行すると発熱や意識の混濁が見られることもあります。 - 低張性脱水
「高張性脱水」とは逆に、水分よりも電解質が多く失われる状態が「低張性脱水」です。体内のナトリウム濃度が相対的に低くなり、低ナトリウム血症を伴います。
汗をかいた後に水だけを大量に飲んだときなどに起こりやすく、尿の量にはあまり変化は見られません。また、のどの渇きをあまり感じないのが特徴です。食欲不振や嘔吐、めまい、倦怠感、血圧低下などの症状が現れます。 - 等張性脱水
下痢や嘔吐などで水分と電解質が同じくらい失われ、全身を巡る血液の量が大きく減る状態が「等張性脱水」です。血圧の低下や脈が速くなるといった症状が出やすく、のどの渇きや皮膚の乾燥など高張性・低張性両方の症状が見られることもあります。
脱水症状の重症度
脱水の症状の重さは、体内の水分がどの程度失われたか、体重減少率によって変化します。
- 軽度の脱水症状
脱水によって体重の1〜2%量の水分が失われると、強いのどの渇きを感じ、尿の回数と量が減ります。発熱や軽い下痢、吐き気や嘔吐などの症状が現れることもあります。 - 中等度の脱水症状
体重の3〜9%量の水分が失われると、強い倦怠感やめまい、頭痛といった症状が現れます。血圧の低下や臓器への血流低下など、全身に影響が及びます。 - 重度の脱水症状
体重の10%以上の水分が失われることは、非常に危険で命に関わる状態です。血流が大きく減少し、心臓や腎臓の機能が低下。ショック状態になる可能性があります。意識障害や臓器不全を引き起こすこともあり、ただちに病院で治療を受ける必要があります。
脱水症状と
熱中症の違い
脱水症状は、体内の水分と電解質が不足することによって起こる体の不調ですが、熱中症は高温多湿な環境に体が適応できず、体温を調節する機能が正常に働かなくなり、体内に熱がこもることから起こるさまざまな健康障害です。
脱水症状は季節を問わず起こりますが、熱中症は気温と湿度が高い環境で発症する点が大きな違いです。
脱水症状と熱中症には深い関連があります。脱水症状は熱中症の初期段階で起こり、放置すると熱中症へと進行していきます。普段、私たちの体は皮膚に血液を集めて皮膚温度を上昇させたり、汗をかいたりすることで熱を外に逃がし、体温を調節していますが、脱水状態になると汗をかく機能や血液による熱の運搬機能が弱まり、体温を逃がすことができなくなって熱中症を引き起こします。
脱水症状を防ぐことは、熱中症の予防にもつながります。
熱中症についてはこちらの記事に詳しく書かれていますので、あわせてお読みください。
熱中症とは?|健康管理ラボ by ヤクルト本社
脱水症状による
リスクの増加
脱水状態によるリスクは熱中症だけではなく、尿路結石や腎臓への負担、脳梗塞、心筋梗塞といったリスク増加につながることもあります。
- 尿路結石
脱水は尿路結石の発症や再発のリスクを高める要因です。体内の水分が不足すると尿が濃くなってしまい、尿に含まれるカルシウムやシュウ酸などの成分が固まり、尿路結石になりやすくなります。 - 腎臓への負担
脱水によって腎臓への血流が低下し、老廃物をうまく排出できなくなると、腎臓に負担がかかり、急性腎障害の要因になることがあります。 - 脳梗塞
脱水によって血液中の水分が減ると、血液の粘度が高くなり、血管内で血栓ができやすくなり、脳梗塞を引き起こす可能性があります。
脳梗塞には心臓病や動脈硬化などさまざまな原因がありますが、動脈硬化による脳梗塞は、脱水によって引き起こされる可能性があります。眠っている間は水分補給ができないうえに大量の汗をかくため、夜間から早朝にかけての発症リスクに気をつけたいところです。 - 心筋梗塞
脳梗塞と同じく、脱水で血栓ができやすくなった結果、心臓の血管が詰まることで心筋梗塞が起こる可能性があります。
国土交通省・環境省が後援している「健康のため水を飲もう」推進運動においても、中高年に多い脳梗塞や心筋梗塞は水分摂取不足が大きなリスク要因のひとつであるとされており、こまめな水分補給が呼びかけられています。
脱水症状が
起こりやすい
タイミング
脱水症状は夏に起こりやすいイメージがありますが、季節問わず、日常生活のさまざまな場面で起こり得る症状です。
例えば運動、入浴やサウナなど、大量の発汗によって短時間で多くの水分を失う場面では脱水症状が起こりやすくなります。
また、起床時も脱水症状が起こりやすいタイミングの一つです。発汗や呼吸を通じて眠っている間に水分が失われるため、冬であっても環境によって脱水症状が起こることがあります。
発熱による発汗時、下痢、嘔吐による水分の流出も脱水症状が起こりやすいタイミングと言えます。
脱水症状は暑い夏はもちろん、空気が乾燥する春や秋にも起こりやすく、冬は風邪やインフルエンザ、ノロウイルスなどによる発熱・下痢・嘔吐から脱水症状につながるケースが見られます。
また、子どもと高齢者は特に脱水症状になりやすい傾向にあります。
子どもは大人より体内の水分割合が高く、代謝が活発で水分の出入りが大きいうえに体温調節機能も未熟なため、大人よりも脱水症状を起こしやすいとされています。
成人は体重の約60%が水分ですが、65歳以上の高齢者では約50%と体内の水分量が少なくなってしまいます。高齢者はのどの渇きを感じにくく、トイレを気にして水分摂取を控える傾向もあるため、脱水のリスクが高まります。また、利尿作用のある薬を服用している場合は、さらに脱水を起こしやすくなります。
高齢者の場合は本人が気づかないうちに脱水が進行することも多いため、周りが普段から気を配り、脱水を起こさないよう、早めの対応が大切です。
脱水症状の予防法
脱水症状の予防において重要なのは、「こまめに水分補給をすること」、そして「前脱水のサインに早めに気づくこと」の2つです。
こまめに水分補給をすること
のどが渇いたな?と感じる時にはすでに脱水が始まっているため、のどが渇く前に定期的に水分を摂取しましょう。普段の生活では、コップ1杯程度の水分を1日6回から8回、1〜2時間おきに摂るのがこまめな水分補給の目安です。寝る前、起床時、入浴の前後、運動の前後など、水分が失われやすいタイミングを意識して摂取しましょう。
脱水によって起こりやすい尿路結石は、再発予防の観点からも水分補給が重要です。尿路結石症診療ガイドラインでは、再発予防として、食事以外に1日2,000mL以上の飲水と、1日尿量2,000mL以上を目標とすることが推奨されています。
なお、アルコールやカフェインを多く含む飲料は利尿作用があるため、飲むとかえって体内の水分が排出されてしまいます。普段の水分補給には、水のほか、麦茶などミネラルを含むノンカフェインの飲み物などもおすすめです。
運動時は通常よりも多くの水分が失われるため、特に意識的な水分補給が必要です。また、運動をはじめ、大量に汗をかく場面では、水だけでなく塩分(電解質)の補給も必要です。厚生労働省の「職場における熱中症予防対策マニュアル」では、暑さ指数(WBGT)が基準値を超える時に「0.1~0.2%の食塩水又はナトリウム40~80mg/100㎖のスポーツドリンク又は経口補水液などを、20~30分ごとにカップ1~2杯程度は摂取することが望ましい」と記載されています。
一般的なスポーツドリンク500mlには20g以上の糖質が含まれ、カロリーも100kcalを超えるものが多いため、ダイエット中の方や糖尿病などの持病がある方は摂りすぎに注意しましょう。経口補水液はスポーツドリンクよりも糖質・カロリーが低めですが、「特別用途食品」であり、健康な人が日常的な水分補給に飲むものではありません。医師や管理栄養士、薬剤師などに相談し、必要に応じて利用しましょう。
前脱水のサインに早めに気づくこと
「前脱水」とは、本格的な脱水症状が出る一歩手前の状態で、「隠れ脱水」とも呼ばれます。特にのどが渇いていなくても、爪・皮膚・尿の状態を観察することでセルフチェックが可能です。
親指の爪がピンク色であることを確認した後、爪を押して白くなったら、指を離します。ピンク色に戻るまで3秒以上かかる場合は要注意です。
「ハンカチーフサイン」と呼ばれる方法で、皮膚からも前脱水をチェックすることができます。手の甲を、ハンカチを拾い上げるようにつまみ上げ、すぐ離した後に跡が消えるまでの時間を確認します。3秒以上かかる場合は脱水のサインです。
尿の色も判断材料になり、濃い黄色やオレンジ色になっている場合は水分不足が進んでいるサインで、尿の色が濃いほど水分不足が深刻であることが判断できます。
これらのチェック方法は、一つだけでなく複数行うことで、より脱水のサインを正確に把握しやすくなります。脱水のサインが見られた場合は、適切な対処を行い、必要に応じて医療機関で医師の診察を受けましょう。
脱水症状に
なってしまった時の
対処法
脱水症状かも?と思った時や、セルフチェックで要注意サインが出た場合には、できるだけ早く対処することで悪化を防ぐことができます。基本となるのは「涼しい場所への移動」「体を冷やす」「水分補給」の3つです。
めまいやのどの渇き、軽い頭痛などを感じた時には、まず風とおしのよい日陰やクーラーが効いた室内など涼しい場所へ移動しましょう。体をしめつける衣服はできるだけゆるめて、首や脇の下、太ももの付け根を保冷剤などで冷やすと、体内に流れる血液が冷やされて、効率よく体温を下げることができます。経口補水液などで水分と塩分を同時に補給し、しばらく安静にして体を休めましょう。
安静にしていても症状が改善しない、意識がもうろうとする、自力で水分が摂取できない、嘔吐を繰り返すといった場合は、すぐに医療機関を受診してください。
また、周りの人が脱水症状を起こしているかも?と思った際には、涼しい場所へ移動させ、水分補給を促しましょう。症状が重く、本人を動かすのが難しい場合は、迷わず救急車を呼んで病院へ搬送してもらいましょう。