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ニュースリリース

抗がん剤 イリノテカン封入リポソーム製剤の開発を開始

2006.05.18医薬品
 株式会社ヤクルト本社(社長 堀 澄也)は、イリノテカンを封入したリポソーム製剤をテルモ株式会社(社長 高橋 晃)と共同開発します。第1相臨床試験は、2006年5月から米国で開始します。
 当社が独自の研究により発見し開発した塩酸イリノテカン(商品名:カンプト注)は、大腸がんの化学療法におけるファーストラインとして世界的に広く使用されています。
 この度、共同開発するリポソーム製剤は、イリノテカンをテルモ株式会社が開発したリポソームに封入することにより、薬剤効果の持続性とがん組織への集積性が向上し、同時に副作用も軽減させることが出来ます。
 米国での第1相臨床試験は、当社がスポンサーとなって実施します。リポソーム製剤の製造はテルモ株式会社が担当します。
 なお、リポソーム製剤の概要は下記のとおりです。

<リポソーム製剤の概要>
  1. 開発コード :
    IHL-305
  2. 製剤の概要 :
    (1)ポリエチレングリコール修飾リポソーム製剤です
     粒子サイズの均一性が高いことなどの製剤的特徴を有したリポソームをポリエチレングリコールで修飾することにより、生体内での異物反応が軽減されます。
    (2)1バイアル10ml中にイリノテカンを50mg含有します
     本リポソーム製剤内に活性型のラクトン体として存在するイリノテカンが、リポソーム製剤内から徐々に体内に放出されることで、活性代謝物であるSN-38が長時間にわたりがん組織を攻撃し、より高い薬剤効果を示します。
  3. 標的がん腫 : 固形がん

以 上


<ご参考:リポソームについて>
 抗がん剤を投与すると、体全体を循環するため患部以外の健常な部位に対しても望まない薬効が生じてしまいます。つまり、ターゲットとするがん組織のみに薬効が集中せず、薬剤が分散するために、様々な副作用を引き起こすことにもなります。

 そこで、がん組織だけに効率良く薬物を集中させる方法を開発すれば、薬効を高め、副作用を抑えることが出来ます。その有効な方法のひとつとして、体内で「必要な量の薬物」を「必要な部位」に「必要な時間」送達するDDS(Drug Delivery System)技術があります。

 リポソームは、DDS技術の一種で、「リポ」は脂質(リピッド)、「ソーム」は袋を意味し、脂質を水の相に分散させた時にできる極めて小さな微粒子です。この脂質微粒子の膜または内部に薬剤を封入することによって特定の部位に薬剤を送ることができるようになります。

 がん組織は、正常な細胞よりも急激に増殖するために常に血管の新生が起こっています。このため血管壁組織に数百nmの隙間が開いていることが確認されています。リポソーム製剤は、正常な血管壁からは浸透することはありませんが、がん組織特有に見られる並びが荒くなった血管壁からは浸透するため、必然的に病変部位に到達しやすくなります。

 また、がん組織では排泄機能を持つリンパ管が未発達なため、送り込まれたリポソーム製剤が排泄されず、結果としてがん組織において薬剤効果を持続的に発揮できることになります。

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