人も地球も健康に Yakult

今後の経営展望について

~2017年(平成29年)3月期 通期 決算説明会 5月12日(抜粋)~

はじめに

根岸でございます。
本日、東京証券取引所におきまして、2017年3月期決算を発表いたしました。2017年3月期の売上高は3,783億円、親会社株主に帰属する当期純利益は301億円。前期に対しては、為替が円高推移したことや薬価の引下げなどが影響し、減収となりましたが、最終利益は過去最高を更新することができました。

今期の取り組みについて

2018年3月期については、売上高3,980億円、営業利益400億円、親会社株主に帰属する当期純利益305億円、1株当り当期純利益は184円44銭という連結業績予想を発表しました。
ここからは、今期成長のための、主な事業部門の取り組みについて、説明します。

国内飲料食品事業

今期も引き続き、乳製品の売上高拡大に注力した事業展開を推し進めていきたいと考えています。
消費者の乳酸菌に対する関心は、依然として高いことから、今後も乳製品市場を中心に、市場拡大が見込まれます。しかし、競合する他社との戦いに加え、新たな分野からの参入などもあり、競争はますます加熱していくことが予想されます。
このような状況の中で、最も重要なポイントは、消費者から信頼され選ばれるブランド作りであると考えています。その為、今年度も引き続き、ヤクルト類を最重点ブランドとした、グループ一丸となった取り組みと大規模なマーケティング投資を推し進めていきます。
広告については、本年も「ヤクルトブランドの価値向上」を図るために、2年目の挑戦として展開を行っていきます。TVCMでは、コアメッセージを用いて、商品やブランドが持つ特長や競合に対する優位性を、より判りやすく伝えていきます。
また、ジョアについては、引き続きディズニーとのタイアップを行うと共に、これまで提供してきた健康価値に加え、新たに「香り」や「癒し」の効果に注目した、期間限定商品の導入も進めていきます。

そして、お客さまとのコミュニケーションをより深くしていくために、全国サンプリングイベントも昨年を上回る規模で実施したいと考えています。
販売現場での活動としては、ヤクルトブランドの価値向上に向けた、エリア価値普及の展開を進めていきます。「エリア価値普及」という考えですが、当社グループには、「消費者と直接コミュニケーションできる組織・機能」という、同業他社にない事業資産があります。この事業資産を有する全国の販売会社が主体となって、それぞれの地域の取引先や消費者の方々が、経営理念や商品・サービスの価値を理解し、ヤクルトファンになっていただくための、地域密着での普及啓発活動を意味します。
具体的には、宅配のセンターを活用した地域交流イベントや、店舗、病院、学校、事業所などの施設において、健康イベントや健康教室などの開催を行い、積極的なヤクルトのファンづくりを推し進めていきます。

医薬品事業

今期の医薬品の業績予想は、売上高および営業利益ともに、厳しい見通しを立てていますが、ポイントについて説明したいと思います。
当社の主力製剤エルプラットに対する後発医薬品の販売は、平成26年12月に開始され、既に2年以上が経過しましたが、前期末における置き換え率は33.5%に留まっています。この理由は、当社の情報提供力や最新の治療提案などが評価されたためであると考えています。政府による後発品使用促進策の強化もあり、後発医薬品への置き換えは避けられませんが、創薬メーカーだからこそできる講演会やセミナー及び説明会などを通じ、きめ細やかな提案型営業を展開すると共に、症例把握を通じた医師、薬剤師などとの十分な対話による、患者さま本位の最新の治療情報提供活動を展開していきたいと思います。

また、当社が取り扱う後発医薬品については、引き続き「市場シェアNO1」を目指した営業活動を推進していきます。後発医薬品市場では、これまで激しい価格競争が行われてきましたが、薬価制度改革により、今後は沈静化することが想定されます。価格競争から情報提供活動に市場がシフトする中において、「情報提供力のヤクルト」として評価を受けている活動を、継続・強化することにより更なるシェア拡大を目指していきます。
サノフィ社が製造する、抗悪性腫瘍剤ザルトラップに関するコ・プロモーションについては、これまで当社がカンプト、エルプラットで築き上げてきた、大腸がん領域での信頼関係を発揮できる品目であることから、発売開始以降、早期にシェア拡大を目指します。そして、この共同販促を成功モデルに導くことで、新たな事業展開のプラットフォーム作りに結び付けたいと考えています。

国際事業

国際事業の通期予想については、各国での損益予想をもとに、本年1月から3月までの平均為替レートを用いて算出しています。連結ベースでの売上高および営業利益については、増収・増益を見込んでいます。
また、新たなヤクルトの販売地域として、本年3月より中東地域5カ国での販売を開始しました。これにより、販売地域は日本を除く世界37の国と地域に広がりました。

アジア・オセアニア地域

今年度も引き続き、インドネシア、中国がアジア・オセアニア地域を牽引していきます。この2つの国について、ポイントを説明したいと思います。

インドネシアでは、ヤクルトの価値をより判りやすくするために商品展開は「ヤクルト」に特化して普及活動を行っています。今年度も引き続き、昨年同様の高い成長を目指していきます。販売本数の増加に伴い、事業経営で重要になってくるのは、それを支える生産組織と販売組織の強化です。
生産に関しては、既にインドネシア第1工場であるスカブミ工場がフル生産になっていることから、第2工場のスラバヤ工場での製造ラインの増設工事を推し進めています。
販売部門に関しては、YL数及び納品店舗数も増え続けています。高いレベルでの販売組織を維持向上させていくためには、営業教育部門を中心に、組織の階層、職種ごとの人材教育が重要です。その為、インドネシアは広い国土を持つ国ですが、ヤクルト事業を行っている全てのエリアにおいて、YLや社員に対する教育や研修を実施し、質の高い人材教育を徹底させていきます。

また、対外的には、ヤクルトに対する理解を広げ、より深めるために、一般消費者、医療関係者などを意識した広報活動にも力を入れていきます。昨年は15万人の工場見学や5万回を越える健康教室を開催しましたが、今年度もこれを上回る規模での活動を進めていきます。

中国では、糖質が低い商品に対する消費者ニーズを踏まえて、一昨年の10月からオリジナルのヤクルトに加え、ヤクルトライトの導入を進めてきました。その結果、足元では全体の10%以上をヤクルトライトが占めるようになりました。乳酸菌シロタ株の良さを、2つのヤクルト商品から選んでいただくという仕組みは、たいへん好評です。

また、中国におけるヤクルトの市場作りも順調に進んでいます。今年度に入り、1月には黒龍江省ハルビン市、山西省太原市、浙江省嘉興市の3箇所に新規支店を設け、販路の拡大を行いました。更に現在は、江蘇省無錫市に37番目となる支店の開設準備を進めており、7月から販売を開始する予定です。
2002年の広州での販売開始から15年を経て、足元での販売人口は7億人を超える販売市場となりました。しかし、人口大国である中国では、まだヤクルトが店頭に並んでいない地域があります。
これからも、毎年複数の支店作りを通じて、販売地域の拡大を推し進めていきます。

そして、既存市場においては、積極的にヤクルトのファン作りを推し進めていかなくてはなりません。昨年実績ベースでは、1日当り582万本のヤクルトを飲んでくださるファンの方々がいらっしゃいますが、販売人口が6億59百万人であることを考えると、浸透率を示す人口比は、僅か0.88%です。つまりこれは、ヤクルトを毎日飲んでくださる方が、販売人口100人のうち1人に達していないということです。中国市場は、「上海」、「北京」「広州」、「その他中国」の4つのエリアに区分していますが、最も巨大な市場である「その他中国」は、販売を開始してからの期間が短い拠点が多く、浸透率はまだまだ低い水準にあります。先行する市場をベンチマークしながら、浸透率を高めていきます。

米州地域

メキシコ、ブラジル、アメリカの3つの事業所がありますが、それぞれについて個別に説明をしたいと思います。
メキシコについては、トランプ米大統領就任直後、ペソ安進行に伴うドル建て債務の増加や事業リスクの高まりによる新規進出企業の減少などが懸念されました。また現在も、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉問題など、不透明な案件もありますが、為替水準は落ち着きを取り戻しています。
国を取り巻く状況は予断を許さない側面がありますが、メキシコでのヤクルト事業は、これまでと変わりなく、着実に歩みを進めています。販売の機会を創出するために、YLや納品店舗については更に拡大を図っていくと共に、外部に対しては、ヤクルトブランドの浸透に注力し、継続的な成長を図っていきます。

ブラジルでの2016年の実質GDP成長率は、マイナス3.6%となり、2年連続のマイナス成長となりました。個人消費支出も改善がみられなかったことから、当社事業においても影響が生じ、販売実績は前年を下回る結果となりました。しかし、2017年は、緩やかながらも景気回復が見込まれていることから、個人消費の改善には、期待したいと思っています。
外部環境は厳しいものの、ブラジルにおけるヤクルト事業の成長ポテンシャルは高いことから、慌てずに長い目で事業戦略を組み立てていきたいと考えています。人材の育成、商品政策の推進、販売基盤の強化と組織・体制の拡充などを中心とした、事業発展を図るうえで必要な基礎体力を高めることで、将来への準備を着々と進めていきます。

アメリカにおけるヤクルトの販売は、西部や南部の6州において事業展開を行ってきましたが、昨年の7月以降からは、中西部を中心に大手流通チェーンにおいてもヤクルトの販売を開始し、販売地域の拡大を進めました。今期は、カリフォルニアやテキサスなどの既に進出している6州での市場深耕を一層推進するとともに、新規進出エリアにおける販売基盤づくりに注力し、販売数量の増加を図っていきます。

欧州地域

ヤクルトを初めとする全てのプロバイオティクス商品は、未だにヘルスクレームが認められておりません。このため、前期は回復基調にあったものの、新たなお客様づくりでは苦戦を強いられています。しかし、欧州に最初に進出してから既に20年以上を経た現在、ヤクルトは、おなじみの商品として市民権を得ているのも事実です。ヘルスクレーム取得に向けた取り組みを継続していくと共に、先進国におけるヤクルトのブランドポジションを高めていくために、市場ニーズに合わせた商品の改良や新商品の導入検討なども進めていきます。

むすび

当社は、国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共に、平成26 年度から国際宇宙ステーション(以下「ISS」)での、乳酸菌シロタ株の継続摂取による、免疫機能及び腸内環境に及ぼす効果についての共同研究に取り組んできました。宇宙実験に向けた準備を進めた結果、今年度から世界に先駆けて、ISS にて宇宙飛行士を対象とした、世界初の宇宙実験を開始することとなりました。
当社独自の乳酸菌シロタ株を用いた、プロバイオティクスの研究を通じて、宇宙での長期滞在を想定した、機能性宇宙食を目指すと共に、地上社会における人類の健康やパフォーマンス向上を目指していきたいと考えています。乳酸菌シロタ株の可能性は、ますます広がっていくと期待しています。

ご清聴ありがとうございました。

株式会社ヤクルト本社
代表取締役社長 COO
根岸 孝成

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