からだの

レム睡眠と
ノンレム睡眠の
違いとは?

睡眠脳

眠りのタイプはひとつではありません。睡眠中、私たちの体と脳には、どちらも深く休む時間、体だけが休んで脳はメンテナンスを行う時間が交互に訪れています。
レム睡眠とノンレム睡眠と呼ばれる、それぞれの眠りのタイプが担う役割、脳が老廃物を洗い流すしくみ、記憶の定着との関わりなど、2つの睡眠タイプに関わるさまざまな事柄について解説します。

監修
医療法人RESM 理事長/医学博士・日本睡眠学会評議員 白濱龍太郎先生

睡眠には2タイプある

睡眠は、『レム睡眠』と『ノンレム睡眠』という2つのタイプに分けられます。
レム睡眠とは、まぶたの下で目が動く『Rapid Eye Movements(急速眼球運動)』が見られることから、その頭文字を取ってREM(レム)睡眠と呼ばれています。
レム睡眠中は、体は休息した状態ですが、脳は起きている状態に近く、記憶の整理などを行っていると考えられています。

ノンレム睡眠はレム睡眠ではない眠りという意味で、脳も体も休息している眠りの状態です。ノンレム睡眠の時には細胞の修復や脳内の老廃物を除去する作業が行われます。ノンレム睡眠は眠りの深さによって3段階(N1、N2、N3)もしくは4段階(段階1、2、3、4)に分類されます。

ノンレム睡眠とレム睡眠、2つのタイプの眠りは、それぞれが脳の別の場所でコントロールされています。ノンレム睡眠をつかさどるのは脳の中央下あたりに位置する視床下部で、レム睡眠をつかさどるのは、脳の下部にある脳幹です。

眠っている間は、レム睡眠とノンレム睡眠が交互に複数回繰り返されます。この繰り返しは、90分〜120分周期となっていて、起床に近づくにつれてノンレム睡眠が短くなっていき、レム睡眠の1回ごとの長さが増し、目覚めの準備が整うようになっています。
また、脳の中には、ノンレム睡眠中に活発になる神経細胞と、目覚めに関わる神経細胞があります。この2つは、片方が優勢になると、もう片方は抑えられる関係にあり、睡眠と覚醒、それぞれへの移行がスムーズに行われるようになっています。

レム睡眠とノンレム睡眠のサイクル

「レム睡眠とノンレム睡眠のサイクル」図解
  • “レム睡眠・ノンレム睡眠 | 健康用語の基礎知識”. ヤクルト中央研究所. ヤクルト中央研究所,(2024.9.2参照).

ノンレム睡眠の役割

ノンレム睡眠:体も脳も眠っている状態。体温などの生理活動が低下・安定。脳波はシータ波~デルタ波。成長ホルモンが分泌される。

睡眠はノンレム睡眠から始まり、60〜90分かけて浅い段階から深い段階へと進みます。浅い段階のノンレム睡眠では、脳波にシータ波が現れます。また、最も深い段階では脳波にデルタ波が多く現れ、この段階を「徐波睡眠」と言います。徐波とはゆるやかな波を指す言葉であり、脳波にデルタ波が多く現れる状態は脳が休んでいることを示します。

この徐波睡眠は、大脳皮質が発達した哺乳類や鳥類などでよく観察されることが知られています。大脳皮質とは記憶や思考、言語、知覚など、脳の高次機能を司る神経細胞の層で、大脳の表面を覆っています。
脳も体も休息するノンレム睡眠では、段階が深くになるにつれて心拍や呼吸、体温などの生理活動が低下し、安定します。これは大脳皮質を冷やして、リフレッシュさせるためでもあります。

眠りについた直後の徐波睡眠に合わせるように成長ホルモンが分泌されます。成長ホルモンは子どもの発育を支えるだけでなく、大人にとっても細胞の修復や代謝の調節に欠かせない物質です。

年齢を重ねるにつれて、この徐波睡眠は減少し、浅い眠りが増える傾向にあります。夜中に目覚めやすくなったり、若い頃のようにぐっすり眠れなくなったりするのはこのためです。加齢によってメラトニンが減少するためだという説もあるようですが、高齢者と若年男性のメラトニン量を比較した研究においては、メラトニン濃度に大きな違いは見られないという結果が出ています。
ノンレム睡眠は日中にしっかり体を動かすほど深くなる傾向にあることがわかっており、年齢とともに活動量が落ちていくことも、眠りが浅くなる一つの要因であると考えられます。

ノンレム睡眠が
脳の老廃物を流す

脳には、ノンレム睡眠時に、その日溜まった老廃物を排出するしくみがあります。それを担うのが、2012年に提唱された「グリンパティックシステム(Glymphatic System)」という脳の浄化システムです。

ノンレム睡眠時には、脳の細胞と細胞の間にできる隙間が普段より広くなり、その空間に流れ込んだ脳脊髄液が、たまった老廃物を押し流して排出します。睡眠が足りないと、このはたらきが十分に発揮されません。

高齢になると、ノンレム睡眠が減少するため老廃物が十分に取り除かれず、アルツハイマー型認知症をはじめとする神経変性疾患を発症しやすくなる傾向が指摘されています。

レム睡眠の役割

レム睡眠:体は寝ていて脳は起きている状態。血圧値や心拍数、呼吸数が活発に変動。脳波はシータ波。夢を見ることが多い。記憶の取捨選択を行っている。

レム睡眠は閉じたまぶたの下で眼球が素早く動く急速眼球運動が特徴的な睡眠状態です。体は休んでいますが、脳は起きている状態に近く、夢を見るのもほとんどがレム睡眠中です。ただし、夢はレム睡眠中だけではなく、ノンレム睡眠中にも見ることがわかっています。

体を休ませながらも、脳ははたらき続けている。この逆説的な状態を称して、レム睡眠は「逆説睡眠」と呼ばれることもあります。

ノンレム睡眠では心拍や呼吸、体温などの生理活動が低下・安定するのに対して、レム睡眠では血圧値や心拍数、呼吸数が活発に変動します。

レム睡眠中の脳は何をしているのでしょうか?起きている間に得た情報の整理を行っています。脳波にはシータ波が活発に現れ、記憶の形成と定着に重要な役割を果たしています。

マウスを用いた筑波大学の研究では、レム睡眠中、起きている間に学習したことを脳が再生しており、その記憶はシータ波が上りにさしかかる特定のタイミングに合わせないと定着せず忘れられてしまうことが確認されています。眠りの中で脳が学習したことを再生すること、そしてその再生が決まったタイミングで起こること、この2つが、記憶の定着に重要であるのではないか、という研究結果が報告されており、これには、記憶をつかさどる海馬で生まれる新しい神経細胞「新生ニューロン」が関係していることもわかっています。

レム睡眠は、記憶を残すだけでなく、消去にも関わっていると考えられています。眠っている間に、必要な記憶は残され、不要な記憶は消されていく。レム睡眠の間は、脳は休むことなく情報の取捨選択を行っているようです。

ノンレム睡眠から始まる睡眠は、起きる時間が近づくほどレム睡眠が長く現れるようになります。そうやって私たちの体は自然と目が覚めるように眠りを調整しているのです。

動物たちにも
ノンレム睡眠・レム睡眠
がある?

さまざまな動物にも睡眠は存在します。淡水に生息する無脊椎動物、ヒドラは脳を持ちませんが、眠ることがわかっています。

そして、ノンレム睡眠とレム睡眠という2つの眠りのタイプは、哺乳類や鳥類、一部の爬虫類など多くの動物が持っていることが確認されています。

かつては、ノンレム睡眠とレム睡眠の両方が見られる動物は脊椎動物だけだと考えられてきましたが、2023年、沖縄科学技術大学院大学とワシントン大学の共同研究チームによって、タコにもノンレム睡眠とレム睡眠、2つの睡眠タイプがあることが明らかになりました。

タコの脳は人間など脊椎動物とは異なる構造を持ちますが、睡眠中に夢を見るのと同じような現象が起きている可能性もあるそうです。タコの認知機能は私たちが思うよりもずっと複雑で奥が深いものなのかもしれません。

このように、ノンレム睡眠とレム睡眠という2つのタイプの眠りは、人間だけが持つものではありませんが、動物たちの眠りが人間の眠りとどのような共通点や違いを持つのかはまだわからないことが多いようです。

人にとってなぜ睡眠が必要なのかについては、下記の記事も参考になりますのでご一読ください。
なぜ睡眠が必要なのか?|健康管理ラボ by ヤクルト本社[