からだの
睡眠の質を
改善するには?
同じ睡眠時間でも、朝すっきり目覚められる日と、そうでない日があります。眠りの質は、日々の過ごし方によって変わります。厚生労働省は、成人の場合は6時間以上を目安に睡眠時間を確保したうえで、生活習慣や寝室の環境を見直して睡眠の質を高めることを推奨しています。
ノンレム睡眠とレム睡眠、それぞれの眠りを深めるための工夫や、体内時計の整え方、食事と運動の習慣、寝室の環境づくりなど、睡眠の質を高めるための具体的な方法をご紹介します。
睡眠の「質」とは?
そもそも、睡眠の「質」とは何でしょうか。それは、眠りの深さに基づいた考え方です。
私たちが眠っている間には、レム睡眠とノンレム睡眠という、役割の異なる2つの睡眠状態が、90〜120分のサイクルで交互に何度も繰り返されています。
このサイクルが正常で、深く眠れて目覚めがすっきりしているなら、良質な睡眠を取ることができていると言えます。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、「睡眠で休養がとれている感覚」を睡眠休養感と呼び、睡眠の質の指標としています。
深い眠りのためにはある程度の睡眠時間を確保することも重要です。厚生労働省は、成人の適正な睡眠時間をおおよそ6〜8時間とし、少なくとも6時間以上を目安に確保するよう推奨しています。
睡眠の質を上げるため
に重要な
ノンレム睡眠
とレム睡眠
ノンレム睡眠は体も脳も休息している状態で、とくに眠りに落ちた直後に現れるノンレム睡眠がもっとも深く、細胞の修復や代謝の促進を担う成長ホルモンの分泌、脳内の老廃物の除去が盛んに行われています。睡眠の前半はノンレム睡眠が多く出現します。
レム睡眠は、体は休んでいる状態ですが脳は起きている状態に近く、夢を見るのもほとんどがこの時です。睡眠の後半、朝方になるにしたがって、レム睡眠が長く出現して覚醒の準備が始まります。
睡眠の質を上げるためには、ノンレム睡眠とレム睡眠、両方をバランスよく得ることが重要です。
『レム睡眠』と『ノンレム睡眠』の違いについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
レム睡眠とノンレム睡眠の違いとは?|健康管理ラボ by ヤクルト本社
ノンレム睡眠の質を
上げる方法
ノンレム睡眠の重要な役割は、脳をしっかりクールダウンさせることです。ノンレム睡眠の中でも、眠りに入ってすぐに現れる深い睡眠は、日中に酷使した大脳皮質を睡眠前半で集中的に冷却し、休養を取らせます。成長ホルモンが分泌されるのもこの時です。
そして、この深い眠りに入るために重要なのが深部体温です。
深部体温は脳や臓器など体の中の温度であり、日中の活動時には高く、夜間の睡眠時には低くなります。眠る前に手足の皮膚の血流が増えると体の外へ熱が放出され、深部体温が下がりはじめ、寝つきやすくなります。
睡眠の1〜2時間前に入浴して体を温めることや、半身浴などで眠りに入りやすいコンディションをつくることができますが、お湯の温度が極端に高いと、体を活動状態に導く交感神経のはたらきが高まってしまい、かえって寝つきを妨げることがあります。40℃の湯船に10〜15分ほど浸かる、または40℃の半身浴を30分ほど行うのが良いでしょう。
また、光や音の刺激は眠りの質に影響します。例えば、寝ている人に騒音を浴びせる実験では、目が覚める頻度が増え、深い睡眠が減るという結果が報告されています。
レム睡眠の質を
上げる方法
レム睡眠は睡眠の後半に多く現れる睡眠状態ですが、途中で目が覚めてしまうと、レム睡眠の時間を十分に取ることができず、睡眠の質が低下してしまいます。眠りの後半を妨げないような環境をつくることが重要です。
ノンレム睡眠の質を上げる方法と同じく、眠っている間の光や音は、後半の眠りを邪魔します。低い照度の光でも夜中に目覚めている時間が延び、睡眠の効率が下がることがあります。
レム睡眠とノンレム睡眠が交互に繰り返されるのが「眠り」です。光や音を抑えるなど、眠るための環境を整えることはレム睡眠とノンレム睡眠、両方の質を高めることにつながります。
寝る前にお酒を
飲んだらよく眠れる?
寝つきが良くなるからと、寝る前にお酒を飲んでいませんか?アルコールが眠りに効くのは寝つくところまでです。前半は深い睡眠が増えても、後半に入ると眠りの質が落ちていきます。飲んだ量が多いほど、夜中に目を覚ます回数も増えます。
アルコールの過剰摂取はレム睡眠そのものを大きく減らしてしまうという報告もあります。お酒の飲み過ぎにはくれぐれも注意してください。
体内時計の重要性
ノンレム睡眠とレム睡眠のサイクルを整え、良質な睡眠を取るためには、その土台となる体内時計の、定期的なリセットが重要です。
人間の体内時計の周期は平均すると24時間10分程度と1日の時間より少し長いため、そのままにしておくと睡眠のリズムが少しずつ後ろへずれていってしまうのです。
このずれを解消するのが太陽の光です。午前中の光には体内時計をリセットしてくれる効果があります。朝が辛い、なかなか寝つけない、そんな人は朝、起きたらすぐにカーテンを開けて自然光を部屋に入れる習慣をつけてみてはいかがでしょうか。なお、加齢に伴って体内時計が前倒しになる傾向があり、早寝早起きになりやすくなることが知られています。夕方に眠気が来るのが早すぎる場合は、早朝ではなく日中に光を浴びるようにしてください。
日中にたっぷり日光を浴びておくと、夜に出るメラトニン量が増加します。メラトニンとはホルモンの一種で、自然な眠りを促す作用を持つため、睡眠ホルモンとも呼ばれています。
夕方以降に浴びる光は体内時計を狂わせる可能性がありますが、日中に日光を浴びておくことで、夜の照明が体内時計に与える影響を減らすことができます。
昼寝はしていいの?
日中、眠気が続くと仕事や勉強の効率が低下してしまいます。15分程度の昼寝をとることで眠気が和らぎ、頭もすっきりします。ただし、長時間の昼寝は夜の寝つきに影響することがあるため、30分以内を目安にするとよいでしょう。また、高齢世代では昼寝の時間が長くなりすぎると健康への影響が懸念されることも指摘されています。
睡眠の質を上げる
食習慣
睡眠の質は、食事でも上げることができます。朝食をしっかり摂ることが体内時計の調整に役立ちます。朝食を抜く人ほど、睡眠休養感が低い傾向にあるという調査結果があります。また、1週間ほど朝食を抜いただけでも体内時計のリズムが乱れ、遅寝・遅起きになってしまうことも報告されています。
夕食のタイミングも重要です。就寝前についつい食べてしまう夜食や間食は、朝食抜きと同様に体内時計のずれを招き、睡眠の質を低下させます。
仕事などで帰りが遅くなってしまう場合は、夕方におにぎりなどの主食を先に食べ、帰宅後におかずを軽くつまむ、「分食」を行うことで体内時計が狂いにくくなり、睡眠への影響も少ないと言われています。
コーヒーなど、カフェインを含む食品や飲料にも注意したいところです。カフェインには脳を目覚めさせてしまう効果があるため、寝つきが悪くなるだけでなく、眠りそのものが浅くなり、夜中に目覚めやすくなってしまいます。またカフェインには利尿作用があるため、夜中にトイレに行きたくなって起きてしまう原因になります。
カフェインは飲む量が多いほど、睡眠の質に影響を与えます。また、血液中のカフェイン濃度が半分に減るまでの時間は、日本人で3〜7時間とかなり幅があるようです。量の摂りすぎと、夕方以降の摂取は特に気をつけるようにしましょう。
コーヒーや紅茶などは日中楽しみ、夕方以降はカフェインを含まない麦茶やそば茶、コーン茶や黒豆茶、ルイボスティーなどに切り替えるのがおすすめです。
これを食べるとぐっすり眠れる、という特定の食品はありませんが、必須アミノ酸であるトリプトファンは、眠りを促すホルモンのメラトニンと関係のある栄養素です。大豆製品やヨーグルト、バナナ、かつお、鶏むね肉などに含まれています。
トリプトファンから生合成されるセロトニンは精神を安定させるはたらきのある神経伝達物質で、幸せホルモンとも呼ばれており、メラトニンの材料になります。
とはいえ、トリプトファンだけ摂っていれば睡眠の質が上がるわけではありません。日頃からバランスの良い食事を摂ることが、睡眠の質を含めたすこやかな生活につながります。
睡眠の質を上げる
運動習慣
運動は、眠りの質を支える大切な習慣です。日中の身体活動量が多いほど、その夜のノンレム睡眠が長く、深くなると言われています。日常的に運動している人は寝つきが良く、夜中に目が覚めるなどの不眠の症状も少ない傾向にあります。
軽く息が上がる程度のジョギングやウォーキングといった有酸素運動は、寝つきを良くするなどの眠りの質を上げる効果が認められています。しかし、運動の強度を上げすぎるとかえって眠りの質を下げてしまう可能性もあるため、注意が必要です。
夕方や夜に体を動かすと深部体温が上がりますが、全身の血のめぐりが高まって熱が放出されるため、その後、深部体温は下がっていき、眠りを呼び込みます。就寝の2〜4時間前までの運動が睡眠の質を上げるのは、そのためです。ただ、寝る直前に運動すると交感神経がはたらいてしまい、入眠が妨げられてしまいます。
睡眠環境の整備
良質な睡眠を得るためには、寝室の光や音、温度を整え、リラックスできる空間をつくることが大切です。
まずは光です。メラトニンが出始めるのは布団に入る2時間ほど前からですが、その時間帯に照明や液晶からの強い光を浴びると、メラトニンの分泌を邪魔してしまい、寝つきに影響します。その結果、夜ふかしの生活リズムを生み出しやすくなります。
スマートフォンの光が睡眠に悪影響を及ぼすと言われますが、実はスマートフォンの光はそこまで強い光ではないため、光の影響と言うより、SNSや動画視聴などで脳を興奮させている可能性が指摘されています。いずれにしても、寝る直前のスマートフォンの使用は睡眠の質を低下させる可能性があるため、なるべく避けた方が良いでしょう。
眠っている間の光もメラトニンを抑制してしまうため、なるべく暗い部屋で寝ることが望ましいとされています。
次に音。音の感じ方には個人差があり、騒音にも次第に慣れてしまうこともあります。しかし、騒音ストレスは眠りの質に影響します。気になるようであれば、ベッドや布団は壁から離す、遮音効果のあるカーテンや耳栓などを活用するなど工夫してみるといいでしょう。
温度も重要です。年々暑さを増す夏は、エアコンで寝室を涼しく保つことが大切です。冬は寝床の中が暖まっていれば、室温を気にする必要はありませんが、起床時や夜中にトイレに行く時など、急な寒さに体がさらされると血圧が急激に上昇してしまいます。WHOの住環境ガイドラインでは、冬の室温は18℃以上に維持することが推奨されています。