乳酸菌の
新事実、
免疫の起点にはたらく、
乳酸菌 シロタ株のしくみとは?
免疫細胞には、病原体などの異物を見つけて仲間に知らせる役割と、異物を排除する役割があります。乳酸菌 シロタ株については、上気道感染症の発症リスクが低減するなどの有益な作用が知られてきましたが、それが一部の免疫細胞によるものなのか、免疫全体が活性化して得られたものなのかは明らかになっていませんでした。2025年に発表された研究によって、異物を見つけて知らせる役割を担う細胞のうち、従来型樹状細胞(cDC: conventional dendritic cell)にはたらきかけていることが明らかになりました。さまざまなはたらきを持つ、乳酸菌 シロタ株の特徴、特に免疫の起点にはたらくしくみについて解説します。
- 監修
- いちかわ慈優クリニック 院長/医学博士・総合内科専門医・血液専門医 佐川 森彦先生
- ※監修医師は記事内容の医学的な正確性を確認するもので、特定の商品を推薦するものではありません。
2025年発表、
乳酸菌 シロタ株の
新しい研究結果
乳酸菌 シロタ株と免疫の関係については、NK細胞を活性化することや、いわゆる風邪(かぜ)や季節性インフルエンザを含む上気道感染症の発症リスクが低減したことなどを下記の記事でご紹介していました。
乳酸菌 シロタ株とは?|健康管理ラボ by ヤクルト本社
こうした有益な作用が、一部の免疫細胞によってもたらされたのか、免疫全体が活性化して得られたのか臨床試験では明らかにされていませんでした。そこで行われたのが、風邪をひきやすいと自覚している内勤中心の健常成人200人が参加した飲用試験です。
乳酸菌 シロタ株を含む乳製品を28日間飲み続けたグループは、乳酸菌 シロタ株を含まない乳製品を飲んだグループに比べて、上気道感染症の症状が出た日数の割合が低く抑えられていました。あわせて、体に入ってきた異物を取り込み、その情報を他の免疫細胞へ伝える細胞が活性化していることも確認されています。この2つを同じ試験で示した乳酸菌 シロタ株についての研究は、これまでありませんでした。
免疫細胞の種類
乳酸菌 シロタ株がはたらきかけた細胞がどのようなものか知るために、まずは免疫細胞について知っておきましょう。
悪いものを退治して体をすこやかな状態に保つ機能が免疫であり、そのはたらきを担う細胞を免疫細胞と言います。これらは、ウイルスや細菌などの病気を引き起こす原因になる病原体や、毒素などが体に入ってきた時に攻撃したり、体の中の異常な細胞を見つけて排除したり、さまざまなはたらきによって体を守ってくれています。
免疫は、生まれつき備わっている自然免疫と、一度攻撃した病原体を覚えていて次に同じ病気にかかりにくくする獲得免疫(適応免疫)の2種類に分けられます。
自然免疫では、好中球やマクロファージ、NK細胞などが侵入した外敵をいち早く発見し、排除する役割を担っています。相手が強すぎて自然免疫で防ぎきれないときには、獲得免疫の出動を要請します。獲得免疫では、T細胞、B細胞などが連携し強い攻撃力で敵を無力化します。
免疫細胞には、異物を見つけて情報を伝える起点としての役割と、その情報を受けて攻撃する実行部隊としての役割もあります。起点となる免疫細胞に共通するのは、異物を食べるように取り込むはたらきです。これを貪食といい、取り込んだ異物の情報は他の免疫細胞へ渡されます。この、抗原提示と呼ばれる情報の受け渡しによって実行部隊が動き出すというしくみです。
起点となるのは樹状細胞や単球(マクロファージ)、実行部隊はNK細胞やT細胞、B細胞です。好中球も異物を食べて排除する免疫細胞ですが、本記事は今回の研究で対象となった細胞を取り上げるため、好中球については下記記事をご一読ください。
免疫細胞の種類と役割とは?|健康管理ラボ by ヤクルト本社
樹状細胞
木の枝のような突起を持ち、体のいたるところに存在する樹状細胞は、異物を食べ、その情報をT細胞に伝えます。情報を伝えることで、まだ異物と出会ったことのないT細胞も活性化できるのが特徴です。樹状細胞には複数のタイプがあり、単球から分化する単球由来樹状細胞と、共通樹状細胞前駆細胞から分化する従来型樹状細胞(cDC)などがあります。従来型樹状細胞(cDC)はT細胞に情報を伝える力が強いことが知られています。
単球(マクロファージ)
単球は血液中を流れながら、異物や病原体の侵入を監視しています。組織に異物が入り込むと、一部の単球は血液から組織へ移動し、より強力にヘルパーT細胞に情報を伝達できるマクロファージへと成熟します。
また、マクロファージは細菌などの異物を食べ、消化・殺菌することで感染を防ぎます。単球とマクロファージは成熟の段階が違うだけで、もとは同じ細胞です。また、一部の単球は樹状細胞へと変化することもあります。
NK細胞
NKとはナチュラルキラーの略で、生まれながらにして異物を攻撃することから名付けられました。この細胞は全身をパトロールし、ウイルスに感染した細胞やがん細胞を見つけ次第すばやく攻撃します。
T細胞
骨髄でつくられた細胞が胸腺へ移動し、成熟してT細胞になります。胸腺を意味するThymusの頭文字から名前がつけられており、キラーT細胞とヘルパーT細胞の2種類に大別されます。
キラーT細胞はNK細胞と同じく異物を攻撃しますが、より狙いを定めて強力に攻撃します。ヘルパーT細胞は、ほかの免疫細胞のはたらきを調節する指示役です。
B細胞
抗体をつくって異物を中和し、体外へ排出します。感染を防ぐ免疫グロブリンIgA抗体も、B細胞から産生されます。
免疫の起点に作用する
乳酸菌 シロタ株
免疫細胞のはたらきを踏まえて、冒頭で触れた飲用試験の結果を詳しく見ていきましょう。
風邪をひきやすいと自覚している内勤中心の健常成人200人を無作為に2つのグループに分け、一方には乳酸菌 シロタ株を400億個含む乳製品を、もう一方には乳酸菌 シロタ株を含まない乳製品をそれぞれ、かぜの感染リスクが高まる2024年1月から2月の間、1日1本、28日間飲んでもらいました。どちらの乳製品を飲んでいるかは、参加者にも試験を行う側にも知らされていません。
試験期間中は、上気道感染症の症状についてアンケート調査を実施。あわせて、飲用前と14日目、28日目に採血を行って分析したところ、14日目と28日目において、乳酸菌 シロタ株を含む乳製品を飲んだグループでは、従来型樹状細胞(cDC)のHLA-DRの発現強度が、乳酸菌 シロタ株を含まない乳製品を飲んだグループより高くなっていました。
HLA-DRは免疫において重要な役割を果たすたんぱく質であり、マクロファージや樹状細胞などの免疫細胞がT細胞に情報を伝えるはたらきと関わりがあります。つまりHLA-DRが強く現れているほど、これらの細胞が活性化していることになります。
また、単球についても、同じく14日目と28日目に、乳酸菌 シロタ株を含む乳製品を飲んだグループの方が乳酸菌 シロタ株を含まない乳製品を飲んだグループよりHLA-DRの発現強度が高いことが確認されました。樹状細胞と単球は、どちらも免疫の起点にあたる細胞です。乳酸菌 シロタ株がこの起点にはたらきかけていることがわかります。
上気道感染症(風邪)の
予防に役立つ
上気道感染症とは、鼻やのどなどの上気道に起こる感染症の総称で、インフルエンザや風邪などが含まれます。誰もがかかる疾患ですが、原因を取り除く治療法がないため、くしゃみ、鼻水、咳などの症状を抑える対症療法が中心となります。
多くは1週間程度で自然に治りますが、重症化したり、他の疾患を誘発したりすることもあり、日常生活での予防が重要です。
上気道感染症に対する乳酸菌 シロタ株の効果として、スポーツ選手を対象とした試験において、上気道感染症の発症リスクが低減することがわかっています。この時に差が見られた指標が、唾液や粘膜に分泌されて病原体の感染から体を守るIgA抗体の濃度でした。
今回の、内勤中心の健常成人200人を対象とした飲用試験では、上気道感染症の症状として鼻水、鼻づまり、くしゃみ、せき、のどの痛み、たん、発熱、寒気、筋肉痛、関節痛、頭痛、疲労倦怠感の12項目が設定されました。
いずれかの症状が出た日数から、症状が出た割合を算出したところ、乳酸菌 シロタ株を含む乳製品を飲んだグループでは、28日間のうちで上気道感染症症状が出た日数の割合が乳酸菌 シロタ株を含まない乳製品を飲んだグループより低く抑えられました。
また、摂取から15〜28日にかけて、上気道感染症症状が出た日数の割合が顕著に低くなったため、続けて飲むことが効果的であると考えられます。
そして、今回の研究では、乳酸菌 シロタ株が免疫の起点となる樹状細胞や単球にはたらきかけることで全身の免疫系に作用し、上気道感染症の発症が抑えられることがわかりました。
上気道感染症症状の発言率に及ぼす影響
- 平均値±SEM
群間比較 Student t-検定(Holm法により多重補正済)
*p<0.05、**p<0.01
風邪(かぜ)の症状を
抑える役割も
風邪(かぜ)のつらさには鼻や喉だけでなく、発熱や寒気、頭痛、だるさといった全身の症状もあります。今回の試験では、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、せき、のどの痛み、たんの6項目のいずれかが出た場合を「鼻咽頭症状」、発熱、寒気、筋肉痛、関節痛、頭痛、疲労倦怠感の6項目のいずれかが出た場合を「全身症状」として、症状が出た日数の割合を算出しました。
鼻咽頭症状と全身症状のどちらにおいても、乳酸菌 シロタ株を含む乳製品を飲んだグループの症状が出た日数の割合は乳酸菌 シロタ株を含まない乳製品を飲んだグループより低く、15〜28日目以降で顕著に低くなっていました。風邪(かぜ)のつらい全身の症状が出る割合も抑えられたことになります。
差が出たのは、症状が出る割合だけではありません。
症状の重さについても、上気道感染症の症状全体、鼻とのどの症状が、飲用期間をとおして乳酸菌 シロタ株を含む乳製品を飲んだグループのほうが低くなっていました。さらに14日目以降は、全身の症状とだるさについても、症状の重さが抑えられています。
症状ごとの日数も同様です。発熱、寒気、頭痛、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、せき、のどの痛み、たん、疲労、筋肉痛、関節痛、これら12の症状すべてにおいて、乳酸菌 シロタ株を含む乳製品を飲んだグループのほうが症状が出た日数が少なくなっていました。
乳酸菌 シロタ株の
発見者は
予防医学の
パイオニア
乳酸菌 シロタ株には、90年以上にわたって飲用され、研究が積み重ねられてきた歴史があります。
医学博士の代田 稔が強化培養により発見した乳酸菌 シロタ株は、正式名称を『ラクチカゼイバチルス パラカゼイ シロタ株(旧名称:ラクトバチルス カゼイ シロタ株)』と言います。『シロタ』は発見者である代田に由来しています。
代田は「病気にかかってから治すのではなく、かからないための予防が大切」という考えから乳酸菌の研究を重ねた人物であり、日本における予防医学のパイオニアとして知られています。
医者から生まれた
乳酸菌 シロタ株の特長
乳酸菌は乳糖やブドウ糖などの糖類を代謝し、乳酸を多量につくる細菌の総称であり、これまで発見されただけでも数百種類以上の乳酸菌が存在します。
中でも、乳酸菌 シロタ株には、他の乳酸菌には見られない特徴があります。細胞壁は厚い殻(ペプチドグリカン)の表層に長さの異なる2種類の多糖が存在し、この構造により、胃液や胆汁といった強い消化液に耐え、生きたまま腸に到達します。
乳酸菌 シロタ株には「生きたまま腸内にとどく」「良い菌を増やし、悪い菌を減らす」「腸内環境を改善し、おなかの調子を整える」機能があり、乳酸菌 シロタ株を含む飲料を飲み続けることで、腸内のビフィズス菌が増えたり、大腸菌群が減ったり、排便状況が改善されるといった研究結果が発表されています。
研究が進む、
乳酸菌 シロタ株の
はたらき
今回ご紹介した研究では、乳酸菌 シロタ株が、免疫の起点としての役割を担う免疫細胞に直接はたらきかけていることがわかりました。これは、弱った免疫機能を正常な状態に回復させて維持するという、アクセルのようなはたらきであると言えます。乳酸菌 シロタ株には炎症を促す物質がつくられるのを抑える、ブレーキのようなはたらきがあることもわかっています。免疫におけるアクセルとブレーキのメカニズムはまだわかっていないことも多く、さらなる研究が必要です。
乳酸菌 シロタ株についての研究は今もさまざまな角度から進められており、これからもそのはたらきについていろいろなことが判明されていくことでしょう。