人も地球も健康に Yakult

トップコミットメント

株式会社ヤクルト本社 代表取締役社長 成田裕

地球とすべての生き物の健康に
資する企業でありたい。

株式会社ヤクルト本社 代表取締役社長

株式会社ヤクルト本社 代表取締役社長 成田裕

「代田イズム」を受け継いで

ヤクルトの創始者 代田 稔が、有志と共に1935年にこの事業を立ち上げるまで、世界には微生物の力を活用して人々の健康づくりに役立てるという発想はほとんどありませんでした。代田は、生きて腸までたどり着き有用なはたらきをする「乳酸菌 シロタ株」を見出し、乳酸菌飲料「ヤクルト」を世に送り出しました。これを飲用し腸を丈夫にすることが、人々の健康づくりに役立つと信じて価値を世の中に広めたことに始まり、現在、日本を含む40の国と地域で1日当たり約3,800万本の乳製品をご愛飲いただくまでになりました。

世の中になかった価値を生み出し、それを世界に広めた代田は、現代でいうところのスタートアップのようなチャレンジ精神を持っていたと思います。私たちは、「健康に役立ちたい」という想いとともに、こうした精神も受け継いで、世界の人々の健康に貢献する商品やサービスを生み出し、お届けし続けることが使命だと考えます。

※ 2024年度実績

事業戦略と連動したマテリアリティの再設定

これまでヤクルトグループは、その時代時代の健康課題に向き合ってきました。近年では、ストレスや睡眠という現代の課題に対するソリューションとして「Yakult(ヤクルト)1000」「Y1000」が好評をいただきました。また、糖質や糖類、カロリーを気にされるお客さまのご要望にお応えして「Yakult(ヤクルト)1000 糖質オフ」「Y1000 糖質オフ」も新たに発売しています。さらに、人だけでなく動物の健康の維持と向上に貢献するため、2023年から他企業様と協働し、ヤクルト独自の素材を使用した伴侶動物(ペット)向け商品を展開しています。2024年には猫用サプリメント、2025年にはドッグフードを発売しました。

これらは、2021年に策定した長期ビジョン「Yakult Group Global Vision 2030」(以下YGGV2030)の達成に向けた取り組みの一例です。YGGV2030では、変化する社会の中でも、企業理念である「私たちは、生命科学の追究を基盤として、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献します。」を実践し、さらに成長し続けるため、2030年の目指す姿として「世界の人々の健康に貢献し続けるヘルスケアカンパニーへの進化」を定めています。具体的には、3つの定性目標「世界の一人でも多くの人々に健康をお届けする」「一人ひとりに合わせた『新しい価値』をお客さまへ提供する」「人と地球の共生社会を実現する」にひも付く重点テーマをもとに、長期的な事業戦略を立案・実行しています。

YGGV2030の策定から4年が経過した今年、「中期経営計画(2025-2030)-Paving the Way to Our Centenary-100周年に向けて」を発表しました。その中で、企業価値最大化に向けた基盤強化の重要な要素として、非財務戦略を策定しました。特に、人的資本と自然資本の強化を図り、グループとしてサステナビリティを重視する姿勢を打ち出しています。

これに伴い、従来のマテリアリティを見直すことにしました。変化する社会環境や多様化する社会課題に対応するとともに、グローバルでの成長をより確かなものにするため、YGGV2030の3つの定性目標それぞれと連動して、新しいマテリアリティを定めました。

「世界の一人でも多くの人々に健康をお届けする」

  • 「安全・安心な製品と情報の提供」
  • 「地域社会との共生」
  • 「強靭で持続可能なサプライチェーンの構築」

「一人ひとりに合わせた『新しい価値』をお客さまへ提供する」

  • 「地域に根ざした健康の普及」
  • 「多様な健康ニーズに応える健康価値の創出」

「人と地球の共生社会を実現する」

  • 「気候変動の緩和と適応」
  • 「持続可能なプラスチック容器包装の推進」
  • 「持続可能な水資源管理」
  • 「生物多様性の保全」

加えて、定性目標達成のための基盤は「人」であると考え、「事業の成長を支える人的資本」としてのマテリアリティも新たに設定しました。

  • 「従事者の健康・安全・安心」
  • 「新しい価値を提供できるイノベーティブな人材の育成」
  • 「従事者の多様性の尊重」

マテリアリティへの具体的な取り組み

YGGV2030の定性目標の中でも、「人と地球の共生社会を実現する」は、コーポレートスローガン「人も地球も健康に」の想いを色濃く反映しています。この目標には、環境に関わる4つのマテリアリティ「気候変動の緩和と適応」、「持続可能なプラスチック容器包装の推進」、「持続可能な水資源管理」、「生物多様性の保全」をひも付けました。どれも事業を継続するうえで極めて重要な課題です。「環境ビジョン2050」で掲げている「バリューチェーンにおける環境負荷ゼロ経営」に向けて、再生可能エネルギーの導入やプラスチック製容器包装の水平リサイクルのしくみづくりなど、さまざまな取り組みを進めています。

また、「地域社会との共生」と人的資本の3つのマテリアリティに深く関わっているのがヤクルトレディの存在です。少子高齢化が進む日本の社会では、地域の中でのヤクルトレディの役割も広がっています。日本においては、全国にある販売会社が多くの自治体と連携し、一人暮らしのお年寄りの見守り活動や地域の防犯協力活動を行うなど、お客さまの健康を担うだけでなく、さまざまな形で地域社会に貢献しています。お客さまとの強固な関係を築いてヤクルトグループへの信頼感を醸成するとともに、社会にも貢献するヤクルトレディの存在は、私たちの大きな財産といえます。

これまで述べた12のマテリアリティに取り組むことは、YGGV2030の達成と企業理念の実現を推進し、ヤクルトグループのみならず、地球や社会の持続可能性を高めることにつながると考えています。

サステナビリティ経営の深化

サステナビリティとは事業そのものに関わる重要な考え方であり、持続可能な地球や社会を踏まえた経営なくして、事業の存続は難しい時代です。 そのため、サステナビリティを推進する体制も強化しています。2024年にサステナビリティに関する対策や対応状況等について審議し、取締役会に答申する機関である「サステナビリティ諮問委員会」を設置したのに続き、今年度は「CSR推進委員会」と「プラスチック容器対策委員会」を統合し、取締役会のもとで、サステナビリティの基本戦略や対策を審議・推進する「サステナビリティ推進委員会」を設置しました。これまで以上に取締役会の監督機能を強化し、サステナビリティ経営を推進していきます。

ヤクルトは今年創業90周年を迎えました。10年後の2035年には節目の100周年となります。しかし、ホモ=サピエンス(人類)の歴史に比較すれば、100年もほんのわずかの時間です。私は、さまざまな病気に打ち勝ってきた人類の進化には、腸内細菌も大きな役割を果たしたのではないかと想像しています。宇宙探索と同じで、腸についてはまだ解明されていない分野もあり、未発見の腸内細菌もあるでしょう。人の健康、動植物の健康に役立つ新しい菌も、これから見つかると思います。

健康は、国や文化の違いをこえ、さらにはすべての生き物にとって共通のかけがえのない価値があると考えています。私たちは「プロバイオティクスのメーカー」として、地球とそこに生きるすべての生き物の健康に資する企業でありたいと考えます。

2025年10月

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